スーパーノヴァの読書日記

主に本について書いています。たまにドラマや音楽や映画についても語ります。気軽にコメントいただけたら幸いです。

「奇妙にこわい話」 阿刀田高・選

本書は奇妙にこわい話を公募して集め、阿刀田高さんが選んだ短編集となっている。

僕はこの手の短編集が大好きで、星新一さんが集めた「ショートショートの広場」シリーズも大好きだ。

これらの本で特に面白いのは最後についている選評だ。

この話は何点とか、大賞にした理由とかを載せている。プロの作家さんがどんなところに注目して何を面白いと感じているのかはとても興味深い。

基本的には言葉の使い方や誤字がないことが大切とあるから僕も気をつけている。

阿刀田高さんの選評で特に印象的なのは本書では実話をただ書いて送ってくるのではなくて読み物として面白いものを載せているとあるところだ。

確かに心霊体験などは文字にしてしまった瞬間にリアリティがなくなってしまう。当事者でしか語れないことをいくら書いたとしても体験してみないとリアルではない。

ならば、読んでいてリアルに感じるような、共感できるような、面白いものの方が絶対に優れているだろう。

その採用基準を示すように本書のシリーズで「自分の影が自分を食べる世界」が書かれたものが載っている。

阿刀田高さんも選評でこれは実話体験ではなく、ショートショートだろう。と書いていた。

普段は優しすぎるくらいに優しい人が満員電車の中で前の人の背中に口紅で落書きしていた話など、人の怖さを描くものもあるから面白い。

 

僕が把握している限りで四作あるこのシリーズはどれも読みやすくておすすめです。

今回は内容をあまり紹介していませんね。たまにはあっさりと終わります。

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「誓約」 薬丸岳

友だちからこの本をもらって読み始めました。

なんで薬丸岳さんとは初めましてでしたが、最高の1冊とはなりませんでした。

 

主人公は家庭も仕事も順風満帆な日々を過ごしていた向井という男。

男のもとに1通の手紙が届く。「あの男たちは刑務所から出ています」とだけ書かれている。

次にはあの男たちを殺せと脅迫は続く。

向井は過去に犯罪を犯していて家族にも警察にも相談できない。一度は殺人を犯すことを約束してしまうものの残される家族を思うと手を汚すことはできないと考え直す。

向井がとる方法は姿を見せない脅迫者を見つけ出し、殺人を思いとどませることだった。

脅迫状の送り主は誰なのかその目的とは何なのか。向井は一人で立ち向かう。

 

序盤から中盤にかけてはとても面白かったのです。

向かいが過去に犯した犯罪の詳細、どのように更生していったか、などが細かく描かれています。

ですが、途中で僕の特殊能力とも言える「途中で犯人が分かってしまう能力」が発動してしまいました。

ミステリー小説は犯人をどこかで提示しないとフェアではないため序盤に犯人を描かないといけません。それだけで容疑者が絞られてしまいます。

そうなると後半はもう答え合わせのために読むしかなくなってしまいます。

だからこそ僕は動機を大切にしています。犯人はなぜ殺人を犯すのか、探偵はなぜ犯人を探すのか。これらがしっかりしていることが最上級のミステリー小説だと思います。

 

今から書く正直な思いは反対意見もあるかもしれません。

僕は過去に失敗した人を許せないわけではありませんが、その人が全く責任を感じず生きていくということは、んっ?ってなります。

上手く言葉で表すのは難しいですが、その人の幸せを素直に祝うことができなくなります。

なので過去の誤ちを家族にばれるのが嫌で殺人という罪をおかしそうになる向井には全く共感できませんでした。

脅迫者が警察に訴えづらくしている部分もありますが、向井には殺人を受諾する以外の方法を考えて欲しかったものです。

 

あと大切な問題として、一人称で書くか三人称で書くのかということ、本書は一人称の文章でところどころで時間が飛ぶ描写が多かったです。

確かに「一時間後、俺は〜にいた。」とかの文は気持ち悪いけれど、飛ばして書くのも気持ち悪いものがありました。

ちょうどいい書き方はなかったのか考えてしまいます。

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祝!100作目は遠藤周作さんで!!

「十頁だけ読んでごらんなさい。十頁たって飽いたらこの本を捨てて下さって宜しい。」

 

一日一冊についてブログに書くということを始めて三ヶ月がたちました。転職してから三ヶ月ということでもあります。

いつも読んでくださっている方には本当に感謝しています。おかげさまで続けることができています。

初めての方や一度でも覗いてくださった方にも深く御礼を申し上げます。

これから何度も覗いてくださるように、また、過去の記事も読みたくなるように面白く、そして役に立つブログにしていきたいと思います。

 

最近では「ノブ」という名前でTwitterも始めました。今はTwitterで過去に書いたものを書き直してつぶやいているのと一日一回つぶやいていうのとで二回つぶやいています。 

あとヤクルトスワローズのことでつぶやいたりもしています(笑) 

 

記念すべき100回目に紹介したい本は遠藤周作さんが昭和35年に書いた本です。

今からだと約60年前に書かれた本ですがその内容はとても今でも新鮮で色あせないものでした。

一言で本の内容を言うと手紙の書き方です。

使っている言葉は古いものの今でも役に立つことがたくさん載っています。

主に手紙を書くときはもらう人の立場に立って書きなさいと言うことが書かれています。

少し本文から書き抜きます。

(1)あなたは、郵便物の中に友人の便りを見つけると嬉しいですか。嫌ですか。

(2)あなたはマメに近況を知らせてくれる後輩と、全く無音(ぶいん)な後輩とどちらを信頼すべき男だと考えますか。

(3)あなたがもし上役だった場合、旅先から1枚の絵はがきを欠かさずよこすような部下を嫌な部下と思うでしょうか、かわいい部下と考えるでしょうか。

この答えはあまりにも明白だと思います。

ぼくたちはなぜ、こんなに筆無精になるものでしょうか。

 

これらが十頁ほどのところで書かれていたので、捨てる訳にはいきませんでした。

序盤で心を掴まれてしまい今では手紙を書くときは本書を参考にしています。

まだラブレターを書いた事はありませんが書くとき必ず役に立つ事は間違いありません。

感謝の思いを伝えるとき、文字で気持ちを伝えたいとき必要な本です。

このブログを読んでくださった方に心から感謝いたします。

これからもよろしくお願いいたします。

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「これは経費で落ちません!②」 青木裕子

このシリーズは今5巻まで出ています。

漫画化されたことは知っていたもののドラマ化も決定したとの情報を入手しました。

 

主人公の森若さん(27才)は経理部で真面目に働く女の子で、不正は絶対に許さない!という正義感は無く帳簿さえ合っていれば見逃すかわいさ(?)を持っています。ウサギは追うながモットーらしいです。

仕事はできる方ですが、あまり雑談をしないことと、愛想を振りまかないところからか誤解されやすくもあります。

あと前作の紹介では書かなかったのですが、年齢=彼氏いない歴でもあります。それは彼女が今の生活を完璧だと思っているからかもしれません。

さてそんな森若さんを誰が演じるのか?

これを考えるのが相当楽しかったです。

僕のイチオシの第一候補は波瑠さんでした。これは彼女の制服姿を見たかっただけかもしれません。

第二候補は小芝風花さんでした。彼女の大人しい演技が見たいです。

とここまで書いていたところ森若さんは多部未華子さんが演じることが決まっていました。

せめて恋人役になるかもしれない山田太陽のキャストは当てたいと考えると、鈴木亮平さんが合うような気がします。

山田太陽は大雑把で女性の扱いもガサツだけど仕事に熱を持っている男らしいキャラです。

森若さん真逆に見えますが、お似合いとも思えます。

果たして彼は「過不足のない現在の生活を完璧だと思っている」森若さんの生活を崩すことができるのか、目が離せなさそうです。

そんなわけでドラマが楽しみですね。とは終われないので、本書の短編の中から一つ紹介します。

 

②巻第四話「これは本当に経費で落ちません!」

ある日森若さんは熊井という社員が仮払金を利用して横領していることに気づく。

本人を問いただすが、彼は同期で金の流れを操作しやすい勇太郎のせいにする。

勇太郎は森若さんの先輩でかなり頼りになる存在だ。森若さんは勇太郎に熊井について相談するのだが、勇太郎は熊井をかばう。

果たして森若さんは不正を見逃すのか。イーブンが何より気持ちいい森若さんがとる行動は必見である。

 

時々このシリーズはミステリーのような話があるから面白いです。

小説は次作が楽しみです。ドラマも必見です!

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「スノーホワイト」 森川智喜

本書は以前に紹介した「キャットフード」のシリーズものです。

なのでまた三途川理(さんずのかわことわり)がでてきます。

彼は一言で言うと極悪人です。

論理的思考力がずば抜けて高いが、自分の名を上げる為には殺人もいとわない僕が見た中で最悪の探偵です。

本書でもその頭の良さと悪徳さは健在でした。

 

彼について語る前にまずは主人公の話を。

白雪姫のような美人な女性は襟音ママエ。真実を映し出す鏡をもつ異世界からやってきた反則の探偵だ。

彼女は推理が苦手でせっかく答えが分かる鏡を持っているのに説明が苦手だ。

自転車の紛失事件や時計消失トリックの真相は分かってもどう依頼人に説明するかまでを鏡に尋ねる。

最強の探偵なのだが、探偵らしくはない。

ある時お金持ちの依頼人に呼ばれママエと三途川は出会う。

名推理を披露するママエだったが、三途川に鏡の存在に気づかれてしまったあげく奪われてしまう。

鏡を取り返そうとするママエ対鏡を意のままに操り、次々に鏡の新しい使い方を編み出す三途川のロジックバトルが始まる。

 

見どころはやっぱり鏡の使い方かな。

「ドドソベリイドソドベリイ!」という呪文のあとに「事件の真相を教えて」というのが普通の使い方だ。

鏡はすぐに真相を教えてくれる。

三途川は鏡の本質は知らせることだとすぐに見抜く。

そして鏡を暗殺の道具にしようとする。

ここが山場だ。ヒントはアマゾンスピーカーに「音楽かけて」と「音上げて」かな。

 

ラストは相変わらず作者の思い描いた通りになりましたとさ。

めでたしとなるかは読んで確かめてみてください。

ちなみに著者はこの作品で本格ミステリ大賞を受賞しています。

ちょっとライトノベルに近い一冊です。

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「ありがとう、さようなら」 瀬尾まいこ

僕の親族に中学校の先生がいることと僕自身が小学校で働いていたことがあって、とても身近な内容のエッセイ集だと感じました。

僕がエッセイを読むのは珍しいのですが、一日で読むことができて、全ての話が最高に面白かったのは初めてです。

本書は瀬尾まいこさんとは初めましてだったにも関わらず、背表紙も見ずに手に取ったものです。

(昔はあらすじを読んでから買っていたのですが、最近はインスピレーションで買うことが増えました。)

それで最高の一冊に出会えたのですから僕の嗅覚が研ぎ澄まされてきたということでしょうか。

 

本書は瀬尾まいこさんが小説家兼中学校教員だった時のエッセイ集です。これは雑誌のダヴィンチで連載していたものを集めたものみたいです。

給食の鯖が苦手だとか生徒に告白されたとか赤裸々に語っています。

解説にもありましたが、筆者は本業と執筆内容のバランス感覚がいいですね。

瀬尾先生と近くにいる子だったらこれは自分とのことを書いていると分かる内容なのに、誰もがほっこりできる内容にしていました。

基本的に人の悪口を言わず、自虐ネタで笑わせてくれたのが良かったのだと思います。

本書で瀬尾先生は自分のことを化粧気が無くモテない、どんくさいくて反射神経が鈍いだの散々な言いようでした。

気になった僕はネットで瀬尾まいこさんを調べてみることに!

すごく美人な方で驚きました。でも学校では化粧していないこととたまには怒るかもしれないので生徒からみると見え方が違うのかもしれませんね。

 

各章を3ページでまとめてあってすごく読みやすかったですが、特に良かったのは野球の話でした。

当時瀬尾先生が働いていたのは小規模校で男子はみんな野球部に入らないといけなかったみたいです。

それでも勝てないのに部活が選択制になり、部員が減ってしまうとさらに勝てない。それでも野球を楽しむ子どもたちに感動したという話でした。

やはりひたむきに努力する様子は素晴らしいですね!

瀬尾先生は生徒さんの個性を魅力的に書くのが上手いです。

そんな瀬尾先生が書く小説は絶対に楽しいだろうなと思わせてくれるのには充分すぎました。

 

他にはマラソン大会や合唱祭といった中学校ならではの話が多かった気がします。

瀬尾先生ならではの作品に興味を持つことができた一冊でした。

この度は素敵な物語に引き合わせてくれてありがとうございました。先生さようなら。またお会いしましょう。

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「俺、猫だけど夏目さんを探しています。」 白野こねこ

写真が残っていたら公開したかったのですが、実家で飼っていた黒猫のくまは世界一美しい猫でした。

長い睫毛と切れ長の目、人を寄せ付けない雰囲気を持ちつつも寒い時は甘えてくるツンデレさんでもありました。

それに加え、胸元と足の付け根に白い毛が生えていてそれが下着姿のようで、色気がたっぷりとありました。

時々、くまが足を広げて座っていたら家族でお嫁に行けなくなるよと注意していました。

 

本書の主人公もくまと同じく黒猫です。

お腹の一部が白いのも似ていますが、作中ではブサイク猫と呼ばれていたし、表紙の絵を見てもくまの方がかわいいです。

でもクロのおかげで黒猫の白い部分のことをエンジェルマークと呼ぶことを初めて知ることができました。

改めてくまのエンジェルマークはセクシーでしたが、くまの話はもうきりがないので終わりにします。

 

本書のタイトルから分かる通りに語り手が黒猫のクロで、夏目さんは野良猫のクロにエサを与え続けた優しいOLさんとして描かれている。

本書は野良猫のクロが元野良猫のクロになり、夏目さんが元夏目さんになるまでをていねいに描いた家族の話だ。

夏目さんと使い魔(←クロは夏目さんの恋人を使い魔と呼ぶ)がドタバタがあって仲良くなる様子はとても微笑ましかった。

ドタバタを詳しく書くと、夏目さんはクロにエサをあげるなど、猫好きでクロのことを可愛がっていたが、そこに使い魔が来ると逃げてしまう。

それが何度かあり、次第に夏目さんはクロのところに来なくなってしまう。

このままだと食いぶちをなくしてしまうと考えたクロは夏目さんを探すことに。

何とか夏目さんを見つけることができたが、そこに使い魔が現れて不穏な空気になる。

(何度も街中で二人と一匹がばったり会うのは偶然だ。)

夏目さんが使い魔を避けていた理由はくだらないので書かないが、答えとしては使い魔の妻が夏目さんとなる。

その後、二人は結婚して双子を生み、クロを家族として向かい入れる。

一方でクロは美しい白猫と子どもを作る。

双子をしっぽであやすクロは猫にない忠誠心を持っていて素敵だ。

他には使い魔の妹と元夏目さんの弟の話、クロが神様猫として崇められるというほっこりする話が続く。

 

猫小説としてはモフモフ感(?)が足りなかったことと、日常の謎系ミステリーをやりたかったのだろうが謎が弱すぎたという弱点がありました。

しかし、猫の交尾を真正面から書いたことが珍しいのと、エンジェルマークという言葉を教えてくれたから満足な一冊になりました。

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「ON 猟奇犯罪捜査班 藤堂比奈子」 内藤了

波瑠さんを主演にドラマ化もしましたね。

ドラマの初回で凄惨なシーンを流したとしてBPO(放送倫理番組向上機構)から注意されたのが記憶に新しいです。

確かに凄惨なシーンでしたが、事件の異常性をテーマにするのには効果的すぎました。

 

奇妙で凄惨な自死事件が続いた。

被害者たちは、かつて自分が行った殺人と同じ手口で命を絶っていた。

誰かが彼らを感覚操作して、自殺に見せかけているのか?

この事件を新人の藤堂比奈子が追うのだが、新人らしい失敗と無駄に熱いところが彼女を応援させてくれた。

 

読み始めてまず驚いたのが、ドラマの藤堂比奈子と小説の藤堂比奈子は別人だということ。

ドラマの藤堂比奈子はサイコパスの設定で、悲しいとか怖いとかの感情がない。

ドラマの「ON 」の意味は藤堂比奈子が家を出る前に、普通の刑事を演じるためのスイッチを表している。

小説の主人公がそれだと共感ができず、主人公を見たくないという理由で読めなくなる可能性があった。

しかし、すぐに藤堂比奈子は普通の女の子ということが分かりホッとした反面、逆に心配になった。

犯罪者を憎む気持ちや被害者を悼む気持ちが強い一面があるが、食べるのが好きなのに太りすぎないようにセーブする一面もある。

それはとても可愛らしい。のだが、刑事としての強さが見えないのは今後も凄惨な事件が続くことが分かっている僕は心配して当然だろう。

彼女は仲間を味方につけやすい彼女の性格に救われた部分があった。

バイクに名前を付ける奴もいるし死神と呼ばれる法医学者もいるのだが、みんな彼女に力を貸している。僕はすぐに彼女のファンになった。

指導役の先輩はとても熱くて犯罪者にムカつく気持ちを藤堂比奈子と共有してくれた。(このムカつくという表現が僕のイチオシポイントだ)

段々と犯罪者と戦う力を付けるのを見るのがとても楽しかった。

他にもカウンセリングなどの心理学をもとに話を作っていることも良かった。

そりゃ普通は自殺なのに自分を撲殺とかはできないよね。

それが、できるようになるための根拠が面白い。

 

シリーズ全ての本を集めたのはこれが人生で初めてです。

犯人に対して一人で挑もうとするところは本当に危険だからやめて欲しいという僕の声が届かないまま終わってしまったのは、ちょっと残念なポイントです。

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「悪魔のいる天国」 星新一

タイトルがとても良いですね。

矛盾したタイトルですが、星新一さんの手にかかれば素敵な話が生まれそうな気がします。

今回は本書の中から二つの話をネタバレ全開で紹介したいと思います。

 

一つ目の話はできるだけ本文の言葉を使います。

「宇宙のキツネ」

宇宙研究所にキツネを連れた男が現れた。

彼いわくこのキツネは化けることができて宇宙探索に向いている。馬になったり豚になったり、挙げ句の果てには美女になってみせたりもした。最終的には食べてもいい。

これはいいと試しに操縦士がひとりえらばれ、キツネを連れて、宇宙船で飛び立った。

一週間後操縦士が降りてきた。人々は興味津々。

「どうだ。役に立ったか?」

「ああ、まあまあだね」

「味はどうだったか?」

「なんとか食える、といったところだね」

そのうちひとりが操縦士の尻あたりを指差して聞いた。

「しかし、尻につけている、その変なものはなんだい・・・」

 

オチが秀逸だ。操縦士は食べられてしまったのだろうか。

ちょっと気取ったことを書くと一人と一匹での探索だから悪さがしやすいし、一週間という時間を設けたのは言葉を覚える為だったのかもしれない。

星新一さんはこの辺りのさりげない描写がすごいのだ。

 

もう一つは本格ミステリのような話。

「交差点」

刑事が語り手で交通係の警察官と話していると事故が多発する交差点があるとのこと。なんでも交通量は多くないし、見通しはいいのに事故が起きてしまうのだそう。事故の目撃者は被害者がふいに自分からバスに飛び込んだと証言している。

そのような会話をしていたところを新聞記者に聞かれてしまった。記者はスクープ欲しさに現場に張りこむことを刑事たちに宣言し、現場に向かう。

大衆の要求が、記者をあんな風にしてしまうのだろうなどと話していると電話があり、記者の彼が例の交差点でトラックに轢かれて亡くなったことを知る。

交通係の警察官は遺品のカメラを持って帰ってきて、フィルムを現像してみると、例の交差点の写真だった。そこには17歳ぐらいの美しい女の子が写っていた。しかも笑って。

この子を撮るために不注意になって事故にあったのだろうと思った。しかし、この女の子はトラックが来るのがわかっていたはずなのに注意しようともせず、楽しそうに笑っているのは妙だと思い直した。

罪にはならないとしても厳重注意が必要だと思い、現場で彼女を探す。聞き込みをしてもなかなか見つからなかったが、遂に見つけたので、走って追いかけた。

交通係の警察官はそっちには誰もいないぞと叫んでいるが、この女が目に入らないのはやつがどうかしている。

「おい。きみ。待ちたまえ」

「あの、あたし・・・」

「いったい、きみはだれだ」

「あたし・・・。死神よ」

と答えて、楽しそうに笑った。あの写真のように。

私は思わず、あとずさりした。だが、私のすぐうしろには、たまたま工事のためふたが外されていた、マンホールの深い穴が待ちかまえていた。

 

本書は1961年に発表されたが、新聞記者の不幸を喜ぶ体質を皮肉っている。

50ページくらいのミステリーとしてもいい話だが、7ページでまとめている。

お見事としか言いようがない。

 

星新一さんの話を今まで書けなかったのはネタバレせずには魅力を伝えられない自分がいたからです。

毎日書くことがなくなったら一日一話書いて凌ごうかな。

冗談ですよ(笑)それだけはしません。

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石田衣良さんについて

「1ポンドの悲しみ」 石田衣良

 

石田衣良さんは「IWGP(池袋ウエストゲートパーク)」シリーズで有名な作家です。

若者や女性を中心に人気があるような気がします。

しかし、僕は石田衣良さんの本を十作以上は読んでいますが、あまり良い印象を抱けずにいたところ本書で覆してくれました。

 

十数年間のことですが、今でも鮮明に覚えているとある書店でのOL同士の会話があります。

「石田衣良の小説って読んでも何も残んないよね〜。」

「分かる分かる〜。なんか頭からすぐに抜けていく感じ。」

とこんな感じでした。

しかし、僕はOLさんたちがネガティブなことを言っているようには感じませんでした。

それはポジティブなメッセージもあったからです。

OLさんたちの会話からわかることは一冊以上は石田衣良さんの本を読んでいるということ。

どこかでアンケートを取って欲しい気もしますが、読んだことのある作家ランキングなるものを作ったときには東野圭吾さんや赤川次郎さんを脅かす存在になると思います。

読みやすく手に取りやすい作家さんとして、最前線を駆け抜けている作家さんだと思います。

 

さて本書は石田衣良さんの得意分野の一つで恋愛短編集です。

様々な男女の組み合わせ、あの手この手を尽くした障害などはありきたりですが、ひとつだけ特異な話がありました。

それが表題作である「1ポンドの悲しみ」でした。

 

最初のシーンで男女がホテルに二人。

名古屋で会う二人は遠距離恋愛中だ。

ずっとイチャイチャしてから物語は後半へ。

新幹線のホームで別れを惜しむ二人。

「この世界は僕たちの悲しみが動かしているんだ。だってさ今ここから見えるものがすべて悲しいもの」

と悲しみながら物語は終わる。

 

恋愛短編集でこの流れは初めて出会いました。

何の山場も作らずにほとんどが濡れ場のシーンだけで終わる。

こんな終わり方、こんな書き方もありなんだと思い、衝撃を受けました。

何も起きないけど、胸にしみる。

この書き方は勇気がいると思いますし、本当に実力がないと書けないと思います。

 

今回は今でも記憶に残る短編集の紹介でした。

他にも「デートは本屋で」の話も素敵でした。

全てで10編のショートストーリーが紡ぐ一冊は本棚に彩りを加えること間違いなしです。

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