「誓約」 薬丸岳
友だちからこの本をもらって読み始めました。
なんで薬丸岳さんとは初めましてでしたが、最高の1冊とはなりませんでした。
主人公は家庭も仕事も順風満帆な日々を過ごしていた向井という男。
男のもとに1通の手紙が届く。「あの男たちは刑務所から出ています」とだけ書かれている。
次にはあの男たちを殺せと脅迫は続く。
向井は過去に犯罪を犯していて家族にも警察にも相談できない。一度は殺人を犯すことを約束してしまうものの残される家族を思うと手を汚すことはできないと考え直す。
向井がとる方法は姿を見せない脅迫者を見つけ出し、殺人を思いとどませることだった。
脅迫状の送り主は誰なのかその目的とは何なのか。向井は一人で立ち向かう。
序盤から中盤にかけてはとても面白かったのです。
向かいが過去に犯した犯罪の詳細、どのように更生していったか、などが細かく描かれています。
ですが、途中で僕の特殊能力とも言える「途中で犯人が分かってしまう能力」が発動してしまいました。
ミステリー小説は犯人をどこかで提示しないとフェアではないため序盤に犯人を描かないといけません。それだけで容疑者が絞られてしまいます。
そうなると後半はもう答え合わせのために読むしかなくなってしまいます。
だからこそ僕は動機を大切にしています。犯人はなぜ殺人を犯すのか、探偵はなぜ犯人を探すのか。これらがしっかりしていることが最上級のミステリー小説だと思います。
今から書く正直な思いは反対意見もあるかもしれません。
僕は過去に失敗した人を許せないわけではありませんが、その人が全く責任を感じず生きていくということは、んっ?ってなります。
上手く言葉で表すのは難しいですが、その人の幸せを素直に祝うことができなくなります。
なので過去の誤ちを家族にばれるのが嫌で殺人という罪をおかしそうになる向井には全く共感できませんでした。
脅迫者が警察に訴えづらくしている部分もありますが、向井には殺人を受諾する以外の方法を考えて欲しかったものです。
あと大切な問題として、一人称で書くか三人称で書くのかということ、本書は一人称の文章でところどころで時間が飛ぶ描写が多かったです。
確かに「一時間後、俺は〜にいた。」とかの文は気持ち悪いけれど、飛ばして書くのも気持ち悪いものがありました。
ちょうどいい書き方はなかったのか考えてしまいます。