「神様からひと言」 荻原浩
僕の中でお仕事小説と言えばこれです。
荻原浩さんは元会社員で元コピーライターとだけあって言葉の使い方と会社にいそうな人の描き方がお見事です。
本書ではそんな荻原浩さんがたどっていた道を深く味わうことができます。
というよりかは荻原浩さんが会社員時代にできなかったことを本書の主人公にさせたかったのかもしれません。
会社員を経験したことのある人ならば誰でも上司にたてついたり、「やられたらやり返す。倍返しだ!」と言いたくなったりするかもしれません。
本書の内容はそれです。
主人公の佐倉は大手広告代理店を辞め、食品会社に再就職するものの入社早々販売会議でトラブルを起こしてしまう。
そしてリストラ要員収容所と恐れられる「お客様相談室」へ左遷となってしまう。
お客様は神様だと言う社風の下クレーム処理に奔走する佐倉は前に女に逃げられていた。
ハードな日々を生きる彼の奮闘を神様は見てくれているのか。
見どころは3つ。
1つはクレーム処理のプロで上司の篠崎のクレーマー対応だ。
仕事ができない、やる気ないように見える彼が次々とクレーマーを黙らせていく。本書での活躍が目についてしまえば引き抜きの声が上がることは間違いなしだ。
次は佐倉にとっての神様の存在だ。
新宿中央公園の神様と佐倉は親しくしているのだが、公園に住む神様が語る言葉にも要注目だ。
最後は後半にある会議のシーンだ。
会議が出てくる小説は数多くあるが、とても身近なものだけに心が震えた。
物事を伝えるときは、強い覚悟を持って言葉を使う事が相手の胸に響く。そのことは荻原浩さんが培ってきたものだと感じた。そしていつか言いたかった言葉なんだろうなぁと思い僕も胸がすかっとした。
(僕が思っている事とはもちろん違います。今の職場の人にこのブログを読まれたら大変なことになるかもしれないので、強く否定しておきます^^;)
本書は調べてみたら二回もドラマ化していたみたいです。
一つはWOWOWで伊藤淳史さんが主演、もう一つは小出K介氏が主演だったので放送を取りやめたみたいですね。
伊藤淳史さんのをツタヤで探してみることにしましょう。