「ゴールデンスランバー」 伊坂幸太郎
今週のお題「わたしの好きな歌」
ゴールデンスランバーは訳すと黄金の眠りという意味です。伊坂幸太郎さんが好きそうな言葉ですね。このタイトルでビートルズが歌っています。
堺雅人さんが主演で映画化もされたことで有名な小説です。主題歌には斉藤和義さんの「ゴールデンスランバー」が使われています。
物語はいたってシンプルだ。
仙台で総理大臣のパレードが開かれるのだが、総理はラジコンのヘリコプターを使って暗殺されてしまう。
近くにいた青柳は犯人とされてしまい逃げまくる話だ。
敵は警視庁。一丸となって青柳を追い詰める警察もなかなか魅力的だった。
ショットガン男もいるから本気で青柳を殺しにきているのがわかるし、あらゆる証拠を捏造してはマスコミを扇動し青柳を日本中の敵として射殺されても仕方ない雰囲気を作る。
対する青柳は自然とチームを組み、逃げる。
彼を嵌めようとした友だちも結局は彼を逃すし、宅急便屋さんや近くにいた通り魔のキルオも助けてくれる。
青柳の近くにいた人は彼の潔白を疑っていない。
彼がかつて助けたアイドルや元恋人もキーパーソンだ。
捕まったら死ぬ!のは山田悠介さんの「リアル鬼ごっこ」と一緒だが井坂幸太郎の方が遊び心と深みがある。
例えば逃げろと言った友だちのセリフが面白い。
「おまえ、オズワルドにされるぞ」は名言だ。
オズワルドはケネディ大統領暗殺事件の犯人の名前だが彼は犯人に仕立て上げられた疑いがある。
元恋人の樋口晴子は語り手としても活躍する。
青柳を助けようとたくさんの違法行為をしてしまうのだが、全て青柳のせいにする辺りにおかしさはある。
本書では青柳に対して「やったのか?」と聞く人が多いが、それは青柳が助けたアイドルとの関係を聞いているのであって誰も青柳が暗殺事件の犯人だとは疑っていない。必至の逃亡劇にもかかわらずほのぼのとした雰囲気づくりが徹底されているのは曲の選定にもあると感じた。
もちろん小説から音は聞こえないもののビートルズの「ゴールデンスランバー」はすぐに聞くことのできる環境にいる人が多いだろう。聞いてみるとよく眠れそうな曲だったから疲れた人にはいいのかもしれない。
黄金の眠りという歌詞と当たり前の生活がなくなってしまった青柳の寂しさと希望がぴったしな気がした。
映画もとても良かったのでおすすめです。