僕が思う良い警察小説について
「臨場」 横山秀夫
僕はあまり警察小説は得意な方ではない。
加賀恭一郎シリーズは3作くらいしか読んでないし、十津川警部シリーズは1つしか読んでいない。
ちょっと自己分析してみると、トリックを使ったりアリバイ工作したりしてまで、殺人をしたいことにリアリティを感じづらいのだ。
捕まりたくないのならば、死体を隠すことに尽力すればいいし、復讐したいのであれば、刑事に説得されてもその手を止めてはいけない。
(たまに犯人を応援してしまいます。)
とにかく動機が気になってしまうのだ。何でそんなに殺したかったの?って。
それは探偵の捜査する動機も気になってしまい、見返りなしで捜査する探偵がいたら、もうそれだけで読めなくなってしまう。
そんな僕だが、面白いと感じた警察小説はたくさんあって、考えた結果良い警察小説の条件を3つ見つけた。
2つ以上当てはまれば良い警察小説と胸を張ってオススメできる。
ここからはたまに刑事ドラマの話のようになりますが、書籍が原作のものか書籍化されているもので、僕が読了済みのものだけで書いています。
1つ目は主人公が普通であることだ。
はっきり言って目立たないくらいがちょうどいい。
「相棒」の杉下右京は捜査中の犯罪が多すぎだし、「ストロベリーナイト」の姫川玲子は勘に頼りすぎだ。ただ姫川は「インビジブルレイン」の事件以降、少し大人しくなったのが可愛らしい。
棟居刑事や十津川警部は落ち着いているから好きだ。
主人公が普通だと周囲の人、仲間や犯人に焦点が当たるから動機の部分を詳細まで書いていることが多い。
2つ目は仲間が魅力的であることだ。
「富豪刑事」なんかは愉快な仲間達しかいないし、「ガリレオシリーズ」の湯川からは目が離せない。
「臨場」の小説では変わり者検死官の倉石以外の人が語り手を務めているので僕の中ではここに「臨場」が当てはまる。
ドラマの「特捜9」なんかは愉快な仲間達の軽妙なやりとりが魅力的だ。
3つ目が一番重要で論理的に納得させてくれることだ。
これはトリックやアリバイ工作はもちろん犯行動機や捜査する動機も納得させるものであって欲しい。
「扉は閉ざされたまま」は犯行動機が弱いと批判の声も多いが、犯人はそう思ってるんだなと感じさせる文章力が石持浅海先生にはある。
さてようやく「臨場」の話だ。これはとてつもなく優れた警察小説だとオススメできる。
ドラマを観ていてご存知の人も多いと思うが、物語りは倉石という検視官を中心として進む。
短編のうちの一つで倉石が「状況がおかしければ、ブツ(証拠)を疑え。」と言っているのが心に残った。警察官がそんなこと言っていいの?って。
生まれがその地区で、土地勘のある容疑者がわざわざ袋小路に逃げ込んで簡単に捕まった事件なのだが、パニックになって間違えたのだろうとする刑事と状況がおかしいと言って譲らない倉石との戦いはとても面白かった。
最終的には倉石の考えに納得させられた。
僕が思う良い警察小説3つの条件のなかで共感できるものはあるでしょうか?
僕はこんなことを考えながら読書を楽しんでいます。