「ゆきの山荘の惨劇」 柴田よしき
サブタイトル「猫探偵正太郎登場」
前にも書きましたが、黒猫が大好きなこともあってこのシリーズも大好きになりました。というより一番好きなシリーズものです。
柴田よしきさんは一番好きな作家の一人なので、正直ひとりじめしたい気持ちがあって今まで紹介できずにいました。
猫が出てくる小説は数あれど飼い主が飼い猫の名前を覚えていないのはこの作品だけだと思う。
主人公が雑な扱いを受けているのだが、シリーズが7作(今のところ)ある中で正しく名前を呼ぶことの方が少ないので一貫性はある(笑)
飼い主は桜川という売れない女流作家。筆者が自分を投影しているようにも感じる。
語り手は黒猫の正太郎だ。人間の言葉を理解する賢い猫だ。時々桜川の質問に「にゃあ」と答えてあげるのがかわいい。
舞台はゆきの山荘。主人公たちは結婚披露パーティーで来ていたが、事件が次々と起きる。
それを正太郎が桜川にヒントを出しながら解決させるというまぁよくあるような設定だ。
本書の面白さとしては偶然の出来事による意外性と犯行の動機が類を見ないことだろう。
推理小説が好きな人にオススメなのはもちろんなのだが、僕が感銘を受けたのは柴田よしきさんと猫観が似ていたことだ。
猫観という言葉を作ってしまったが、猫はこうゆうとこあるよね、こう考えていそうだよねと感じる人間の見方や価値観のこととして聞いて欲しい。
ここからは僕の決めつけによる猫観が頻発するが、猫を飼ったことがある人は共感できるかもしれない。
まず猫は飼い主以外の人間が殺されたことは全く自分の生活に影響はないので、推理はしないどころか気にもとめないだろう。
推理するとしたらそれは暇つぶしだ。これは正太郎も言っている。猫は暇なのだと。
あと、猫は王様のようなところがあるので自分が一番偉い。人間は自分のために働いていると思っている節がある。ゆえに飼い主を尊敬はしないだろう。
しかし、長く生活を共にするうちに飼い主と情で結びつき合うことがあると思うのだ。
もっとも猫にとっては「仕方ないからこの家に住んであげてもいいよ」というものかもしれないが。
正太郎は桜川の悪口を言いながらも嫌ってはいない。本書では飼い主として認めつつあるといったところかな。
正太郎と桜川の結びつきも強まっていくのだろうか?そこも注目だ。
このシリーズは現在7作出ていてうち5作は短編です。どれも名著なのでまた紹介します。