「陰日向に咲く」 劇団ひとり
この小説とは高校生の時に出会って以来、転職や失恋のたびに読んでいる大切な一冊だ。
映画もとても良かったが、小説の方が数倍楽しめる。
何より劇団ひとり先生の筆力がすごい。今までたくさんの芸人が書いた小説を読んできたがそのどれもが「俺はこんな素敵な話書けます」「俺は本当は頭いいんだぜ」というドヤ顔が文の背後に見えてしまう。ひとり先生は「俺は俺が楽しいと思うことを書くかんな〜」みたく楽しんで書いている様子が目に浮かぶのがいい。
一冊が大きいコントの台本のようだが、いたるところにユーモアと感動が散りばめてある。
モーセの正体、ミキとの友情、アイドルを追っかける理由、オレオレ詐欺電話の行く末、米兵を殴る話。
特にオレオレ詐欺の話が良かった。
(映画では岡田准一くんの話です。)
稼いだ金をパチンコに使ってしまい、同僚たちからも借金をするクズ男が主人公の話だ。
序盤は競馬の必勝法をやる。これは無限にお金があれば可能な技かもしれないと思った。
案の定負けた男はオレオレ詐欺をやろうと決意する。
しかし、電話先の老婆と奇妙な出会いをする。
果たしてお金を騙し取ることができるのか!?
僕は借金をしたことはないが、色んな金融会社から借金を繰り返すと限度額が上がり、レベルアップしたような気分になるというのは少しわかる気がした。
一度踏み込んだら抜けられなくなる沼みたいなものなのだろう。恐ろしい。
この小説には日陰を歩いてるような人ばかり出てくるが、それでも辛いことばかりではなく希望もある。
誰もが人生陰日向で、良いこともあれば悪いこともあると感じさせてくれる。
ひょんなことから幸運なことが起こることもある。
自分の人生もそうであったらいいなと思うととても励まされる。
泣けるところもあるからこの小説は素晴らしい。
小説を初めて読む人にオススメです。