「コンビニララバイ」 池永陽
この本を読んでいた当時、僕の夢はコンビニの店長になることでした。
伝説のコンビニが見つからなければ、自分で作ってしまえと考えていました(このネタを分かってくれる人はめったにいないです)。
ただこの頃はちょっとやる気が落ちていた時だったので本書に登場するミユキマートの店主に憧れを抱きました。
本書はミユキマートというコンビニの店主や店員と利用する客が語り手となる連作短編集となっている。
店主は妻子を事故で亡くしてからというもの、経営に身が入らず内引きや万引きを見逃してしまうし、発注は投げやりで店には哀愁が漂っている。
そんな負の光に引き寄せられるように色々な人が集まりドラマを作る。
堅気の女性に惚れてしまったヤクザ、声が出せなくなった女優の卵、恋人に命じられて売春をする女子高生。
時に泣き、時に笑い、と書いたもののちょっと官能要素があって悲しい話が多いかな。
ララバイだもの。
実はこの中に僕が大号泣した話がある。
最終話の「ベンチに降りた奇跡」ではミユキマートの前に置いているベンチで仲良くなった老人同士の恋を描いている。
毎日の挨拶や会話を通じ、お互いに惹かれ合うものの、女性が信仰するキリスト教の教えのために男は手を出したくても出さない。
店主や店員は色々とおせっかいを働き、焚きつけるものの、二人の仲は進展せず、ある日女性は倒れてしまう。
悲しむ男の声が天に届いたのか奇跡が起き、さらには店主のやさぐれた心にも影響を与えるというストーリー。
ドラマでもそうなのだが、僕はおじいちゃんとおばあちゃんに弱い。
おじいちゃんおばあちゃんが活躍する素晴らしい物語は僕も魅力的なおじいちゃんになる為に今を頑張ってるんだなと思わせてくれるから好きだ。
みなさんのよく使うコンビニにももしかしたら素敵な物語が詰まっているかもしれません。