スーパーノヴァの読書日記

主に本について書いています。たまにドラマや音楽や映画についても語ります。気軽にコメントいただけたら幸いです。

「チルドレン」 伊坂幸太郎

僕は小学校の教員免許を持っていて、今までに色々な子や親御さんに面白い小説の話をしてきました。

(勝手にではありますが、司書の先生と仲良くなり、図書室の番人みたいなことをしていました。)

もちろん相手の興味に合わせておすすめしますが、本書をすすめることが多いです。

帯に「伊坂幸太郎を読むならまずはこれ」とありましたが、初めて読む小説はこれとしたっていいと僕は考えています。

 

本書の魅力はたくさんあって、まずストーリーの組み立てが面白い。一部では伊坂方式と呼ばれる構成をしている。

大きな筋が二本あって、家裁調査官の武藤の話と盲目のイケメン、成瀬の話が交互にすすむ連作短編集となっている。

どちらにも共通して陣内というひょうきんなやつがでてくる。本書は陣内を楽しむ小説と言っても過言ではないだろう。

 

とにかく陣内の破天荒な行動が楽しいのだ。

成瀬が陣内と一緒に銀行強盗に巻き込まれて人質になったときにビートルズの「ヘイ・ジュード」を唐突に歌い出すのは狂気じみているが、彼なりの優しさゆえだ。盲目の成瀬に洋服を選んでもらうことなどから成瀬が「陣内は普通だね。」と語るシーンは感動的ですらある。

武藤のパートでは家裁にやってくる子どもにまつわるストーリーが展開される。家裁調査官の仕事を僕は詳しく知らなかったが、武藤が詳しく説明してくれたし、陣内は駄目親父の子どもだから非行に走ると暴言を吐くことでバランスをとっている。陣内が子どもと口喧嘩をする様子も愉快だ。

 

本書が子どもにおすすめな理由は大人vs.子どもが陣内を介してユーモラスに表現されていることだ。

陣内は時に奇蹟を起こし、駄目親父をカッコいい大人にする。かと思えば、ゴールデンレトリバーを犯罪に使おうとしたり、実の父親を顔が見られないように正面から殴ったりとめちゃくちゃだ。(顔を見られないように正面から殴るという謎は本格ミステリーだ。)

どちらかといえば陣内はやばい人だが、子どものような大人が楽しそうにめちゃくちゃやる様子は大人は楽しいんだよというメッセージを与える気がする。

もちろん、犬を使って人の荷物を盗むことは犯罪なので絶対やっちゃいけないけどね。

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何度も読んだせいか濡れたことがあるのかわかりませんが、表紙がボロボロです。しかし、表紙には薄くて透明なフィルムがかけられていることに気付きました。

新たな発見がとても嬉しいです。