「コンビニ人間」 村田沙耶香
先日参加した読書会でこの本を紹介する人がいて、「この主人公が変わってるんです」と言われたが、僕にはそうは思えなかった。
僕と本書の主人公はとても似ているからだ。
主人公は古倉恵子36歳。コンビニバイト歴18年。社会といえばコンビニでのバイトしか知らない。
店員でいるときのみ世界の歯車になれる。そんな日々に満足していたが、ある日アルバイト仲間として一人の男が入り、恵子の人生は動き始める。
語り手が古倉恵子。それだけに彼女がどれだけ真剣で、まじめに働いているかがよく分かる。
コンビニを円滑に営業するための努力も欠かしていないし、社会にとって自分を道具として使ってくれていることを嬉しく思っている。
ここで改めて始めに戻る。彼女は変わっているだろうかと。
周りの目が気になり過ぎたり、男と奇妙な同棲生活を始めたりしたことは変かもしれない。
だが、それすらも恵子が社会性を身につけたいが故のことだと思うのだ。
簡単には理解できない人だなとは思う。
正社員を目指して欲しい気持ちもある。
しかし、誰にも彼女がやりたいことを妨げる権利はないし、彼女が幸せならばその方がいい。
僕には彼女は普通の人の様に思える。ちょっとまじめすぎる人なのかなって。
もちろん筆者としては変わった人として書いていることも理解できるのだけれども。
ラストはハッピーエンドだったように思うが、人によっては別の感想を持つ人もいると思う。
また始めに戻りますが、僕と彼女は似ています。
僕は元コンビニの社員でした。
一年間のほとんどをコンビニで過ごす激務でしたが、この時間には何をして、この時間にはこの仕事をしてもらってという働き方は性にあっていたと思います。
ただ激務の後遺症があって、今でも毎日11時に近くなると落ち着かなくなってしまいます。
11時前に事務室内にある送信ボタンを押さないとせっかく発注したデータが送られていないことになり、あらゆるところに電話して発注するはめになるからです。
古倉恵子にはそうなって欲しくない気持ちがあります。
まとめになるかは分かりませんが、古倉恵子はあらゆる小説に出てくる登場人物の中でトップクラスに応援したくなる人です。本は薄いですが、内容は深いです。
読むのが早い人なら立ち読みでも読み終われますが、社会の為には買った方がいいと思われます(笑)