「ON 猟奇犯罪捜査班 藤堂比奈子」 内藤了
波瑠さんを主演にドラマ化もしましたね。
ドラマの初回で凄惨なシーンを流したとしてBPO(放送倫理番組向上機構)から注意されたのが記憶に新しいです。
確かに凄惨なシーンでしたが、事件の異常性をテーマにするのには効果的すぎました。
奇妙で凄惨な自死事件が続いた。
被害者たちは、かつて自分が行った殺人と同じ手口で命を絶っていた。
誰かが彼らを感覚操作して、自殺に見せかけているのか?
この事件を新人の藤堂比奈子が追うのだが、新人らしい失敗と無駄に熱いところが彼女を応援させてくれた。
読み始めてまず驚いたのが、ドラマの藤堂比奈子と小説の藤堂比奈子は別人だということ。
ドラマの藤堂比奈子はサイコパスの設定で、悲しいとか怖いとかの感情がない。
ドラマの「ON 」の意味は藤堂比奈子が家を出る前に、普通の刑事を演じるためのスイッチを表している。
小説の主人公がそれだと共感ができず、主人公を見たくないという理由で読めなくなる可能性があった。
しかし、すぐに藤堂比奈子は普通の女の子ということが分かりホッとした反面、逆に心配になった。
犯罪者を憎む気持ちや被害者を悼む気持ちが強い一面があるが、食べるのが好きなのに太りすぎないようにセーブする一面もある。
それはとても可愛らしい。のだが、刑事としての強さが見えないのは今後も凄惨な事件が続くことが分かっている僕は心配して当然だろう。
彼女は仲間を味方につけやすい彼女の性格に救われた部分があった。
バイクに名前を付ける奴もいるし死神と呼ばれる法医学者もいるのだが、みんな彼女に力を貸している。僕はすぐに彼女のファンになった。
指導役の先輩はとても熱くて犯罪者にムカつく気持ちを藤堂比奈子と共有してくれた。(このムカつくという表現が僕のイチオシポイントだ)
段々と犯罪者と戦う力を付けるのを見るのがとても楽しかった。
他にもカウンセリングなどの心理学をもとに話を作っていることも良かった。
そりゃ普通は自殺なのに自分を撲殺とかはできないよね。
それが、できるようになるための根拠が面白い。
シリーズ全ての本を集めたのはこれが人生で初めてです。
犯人に対して一人で挑もうとするところは本当に危険だからやめて欲しいという僕の声が届かないまま終わってしまったのは、ちょっと残念なポイントです。