スーパーノヴァの読書日記

主に本について書いています。たまにドラマや音楽や映画についても語ります。気軽にコメントいただけたら幸いです。

「やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる」 作・浜田秀哉 ノベライズ・百瀬しのぶ

本書は学校にスクールロイヤー制度を導入し、弁護士の田口が奮闘するというもの。

大テーマとして、いじめ問題を法律で解決するというのがあったと思うが、しっかりと表現できていなかった部分は否めない。

というのも敵は強大すぎる上に問題は複雑だからだ。

 

主人公の田口は学校から雇われた弁護士なので、基本的にはというより、法律的に学校の利益になることしかできない。

モンスターペアレントを追い払ったり、顧問のミスをかばったりしているうちは良かったが、公教育の制度を変えなければ根本的に解決しないことに気づく。

勤務時間の超過や休日出勤、部活動の顧問制度などがそれだ。

様々な問題にぶち当たり田口は次第に孤立していくが、その中でも雇い主筆頭の校長先生が隠蔽体質と言われても仕方ない教員だったことが良かった。

田口に優しい口調で接するものの、学校体制を崩さない姿勢はこの物語に必要だった。

法律的な教員よりか、神職としての教員を貫いた校長先生に共感してしまう僕は田口の敵なのだろう。

それでも田口のいじめを法律で解決させようとしている姿勢には頭が下がった。

応援はするし、加害者は退学処分や刑事処罰されればいいと思うが、行き過ぎるとアメリカの学校みたく、銃を持った警備員を巡回させることになりかねない。

たくさん頭を使わされる一冊だった。

 

本書の裏テーマとして「教員は選択できる職業の中の一つか、それとも神聖なる職業で子どもの教育のために己を全て捧げる職業か。」というものがあったと思う。

これはきっと公教育の永遠のテーマになるのだと思う。

 

最後にいじめに対して僕の見解を一つ書いて終えます。長くなってしまいますが。

僕ははたから見るといじめられているように見えていたのだろうという時期がありました。

それは詳しく書きたくないし、訴えたくもないし、当事者を責める気にもなりません。

しかし、先生方は必死になって事実と気持ちを訴えるように言ってきました。

問題になる前に解消させて当校にいじめはありませんとしたかったのかも知れませんし、もちろん心配してくれてたのだなということも分かりますが、信頼しようとはなりませんでした。

この訴えるのを待つ学校の姿勢は時に重大な結果を生むことになると思います。

 

そこで、先生に提案したいのは早期にいじめの芽を摘むことです。

具体的に書きます。

誰かが変なあだ名をつけられていたら、「そのあだ名、私は好きじゃない。もう使うな。」と対応する、ふざけ合っているのか誰かが殴られているのを見たら、「殴るのはよくない。」とやめさせる。

どちらも乱暴で先生が悪者になるやり方ですが、(もちろん先生の日頃の行いが良いことが大前提ですが)一方的な関わり合いを防ぐことはできると思います。

表面的にはいじめが見えなくなるだけだという反論がありそうですが、先生は問題に取り組んでいたと見せられるのではないでしょうか。

こう言うと冷たい印象を与えてしまうかもしれませんが、今の制度だと学校外のいじめは防ぐのは難しいように感じます。

あとは普段の関わりの中で相手を大切にしたい気持ちを育むことが大切になると思うのですが、弁護士はそれができないのが弱点ですね。

 

今回はバカ真面目で長たらしい話ですみませんでした。

この問題は一人一人が考え続け、時に語り合うのが大事だと思うので一石を投じることができればと思いました。また、本書は学校の問題について真剣に考えるきっかけになるのでおすすめです。

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