「可愛い世の中」 山崎ナオコーラ
表紙がシンプルで可愛い本書は女四姉妹の話。
最初こそ姉妹四人でわいわいやる様子は姦しかったが、中頃から二女・草子の話だとわかる。
名前のセンスが独特なことも影響しているのか四姉妹はとても個性的で魅力がある。
長女は星、二女は草子、三女は豆子、四女は花だ。星が35才で、花が24才だ。
このうち星と花は美人で草子と豆子はパッとしないという設定。
四人それぞれ仕事も違えば価値観も違う。草子はキャリアウーマンだが、豆子はニートだ。
本書は草子が可愛いことが求められる世界に疑問を持ちつつも希望を探す物語だ。
山崎ナオコーラさんらしく、繊細な人物描写と新しい価値観を提示する本書にはとても色々なことを考えさせられた。
いつか他の姉妹で作品化したら絶対に買おうと思う。
草子は自分が可愛くないと自覚していて、可愛いを遠ざけてしまう。
その分経済力には長けていて周りからもちゃんとしている人と見られたがっている。
例えば、彼氏との結婚式の最中には結婚式のお金は私が出したと言ってしまうし、花から服をあげると言われた時にはお金には困っていない💢(花が持ってきた可愛い服が似合わないと自覚しているのもあって)と突っぱねてしまう。
正直、草子ほど極端ではなくともこのように周りの目ばかりを気にして生きてしまう人は多いと思う。
草子は夫に産休をとらせようとも考えるが、それでは周りの人からの反発が多いと知っているから悩んでしまう。
草子は他にもあれこれ悩むのでとても大変そうだ。
自分達夫婦の問題は二人で相談して決めればいいのにと思ってしまうのは、僕がまだ未婚だからかもしれない。
草子は最後、希望を持てるのだろうか?それが見どころである。
山崎ナオコーラさんの小説では「人のセックスを笑うな」が有名ですね。
発売当時僕はエロスを求めて読んでみましたがあまりエロくなくてがっかりした経験があります(あくまでも当時ですよ!!)。
しかし、とても面白くて新たな価値観について考えされられる名作だったなと思います。
本書も新たな価値観について考えさせられる名作です。