「盤上に死を描く」 井上ねこ
これは絶対に猫小説じゃないよなと思いながらもつい手にとってしまうのは悪い癖だ。筆者の名前にねことあるだけでふにゃあとなってしまう。
しかし、表紙に将棋の駒があるのも気になって手にとった。
将棋は駒の動かし方を知っている程度だが、囲碁よりかは詳しい。
パラパラとめくってみると将棋盤の図がいくつもある。詰め将棋と呼ばれるものだとはすぐに分かった。
自分の性格を分析して、解き方を深くは考えないだろうなと思いながらも親切に解説してくれそうだという期待感があった。
実際、説明は細かくていねいに教えてくれた。
本書は将棋が重要アイテムとなる本格推理小説。
三部構成となっていて、テンポ良く進む様子は刑事ドラマを観ているかのようだった。
僕が特に感動したのは2つ。
一つは刑事のペアにとても好感が持てたことだ。
警視庁の女性刑事と所轄のおじさん刑事の組み合わせはありがちだが、どちらもお互いの意見を尊重しながら捜査する。
さらに捜査が進展しそうになるたびに上司に相談しているシーンがあるから筆者は相当警察のことを取材したのだろうと伺える。
嫌なやつがいないことと、ペアが仲の良い雰囲気は見てて楽しい。
違法捜査をして集めた証拠は裁判で使えない可能性があるから、このように正しい捜査をしているかどうかは僕にとってはすごく気になるのだ。
もう一つは間違ってはいないことが時に最大の不幸を呼ぶことがあると感じたことだ。
この事件のような不幸は現実世界でも起きるかもしれない。これは僕も気をつけなきゃなって思う。
相変わらずこのミステリーがすごい大賞シリーズには面白いものが多いなと再確認できました。
二度楽しめる構成なのも有難い。
しかし、この小説には猫は一切出てきませんので皆さまはお気をつけてください。