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スーパーノヴァの読書日記

主に本について書いています。たまにドラマや音楽や映画についても語ります。気軽にコメントいただけたら幸いです。

裁判員裁判を昔話でやってみました④

お久しぶりです。今回は昔話法廷の第4巻について書いていきます。

このシリーズは書かずにはいられないですね。特に僕が前から気になっていた物語が出てきたのでテンションがあがりました。

今回は2つの事件の栽培院裁判です。

ひとつ目はブレーメンの音楽隊のロバによる強盗致傷事件。ふたつ目は赤ずきんの赤ずきんちゃんによる殺人事件です。

それではひとつずつ見ていきましょう。

 

1.「ブレーメンの音楽隊」裁判

僕はブレーメンの音楽隊の物語を知らなかったのだが、ロバの上に犬、猫、鶏と乗っている光景だけが印象に残っていた。

しかし、それは関係なかったな。

 

ある日、年老いて働けなくなったロバは主人に始末されそうになり家を飛び出た。具体的にいえば仕事ができなくなったロバにはごはんが与えられなかったのだ。

犬、猫、鶏も同じような境遇で気が合ったから、仲間になり共にブレーメンで音楽隊をやろうと決める。

その旅の道中、泥棒一家が住む家を見つけ、泥棒たちを襲い、家を占拠し、一ヶ月が経った頃に警察に逮捕された。その主犯格がロバだった。

 

ロバたちの罪状は強盗致傷だ。犬、猫、鶏にはすでに執行猶予が与えられている。

弁護士は不遇な境遇にあったロバには同情の余地があるとして情状酌量を訴える。

事実関係に誤認はなく、裁判の争点はこのロバに執行猶予を与えるかどうかだ。

 

判断の材料を箇条書きで。

一、泥棒一家の父は家を追い出されたあと、過酷な野宿生活で風邪をこじらせ死亡している。

二、泥棒一家の父が死亡ののち、一家全員は逮捕されている。

三、ロバは主人から用無し扱いをされていた。泥棒たちをこらしめることでまだ誰かの役にたてる証明になるかと思い、泥棒一家を襲った。これはロバの証言だ。

四、ロバはブレーメンに行く気はなく、ただ住む家が欲しかったのだろう。これは検察側の意見。

五、ロバたちは1カ月に渡り、奪った家を占拠し、その間ブレーメンに向かうことはなかった。

 

この評決は、僕は簡単に出せた。

ロバに執行猶予は与えない。実刑が望ましいだろう。

判断材料の一と二はあまり関係がないな。三に至っては大嘘だ。

本当に泥棒たちをこらしめたかったのならば、暴行のあとに警察を呼べばよかった。

そして、泥棒一家が退去し、空いた家に住めば何もかもがオーライだ。

僕は無一文になり、住む家を追い出されたとしても他人を襲って家を確保しようとは思わない。もちろんそのときの境遇になってみないとわからないこともあるのだろうが。

このロバたちは、不遇な境遇にあるとき、他人から奪うことを選んだ。執行猶予を与えたら、また同じことを繰り返すのだろう。

 

しかし、泥棒一家のお父さんは気の毒だな。

泥棒をしていたから、ロバたちを訴えることもできず、病院にも行けなかった。

刑務所暮らしを覚悟できれば、死ぬことはなかった。

ロバたちも本当に辛いとき、大声で助けを求めればよかったのかもしれない。

そう考えると悲しい事件だな。

今の日本は、どんなに辛い境遇でも大声で助けを求めればなんとかなることが多い。

だが、そのことを知らずに起こる悲劇は多い。その度に悲しくなるなぁ。なんてニュースを見ながら度々思う。

 

2.「赤ずきん」裁判

物語の骨格は多くの人が知る「赤ずきん」だ。

ある日、赤ずきんは森の向こうのおばあさんの家へと向かうのだが、その途中で一匹の狼に遭い、唆されて道草をする。
狼は先回りをしておばあさんの家へ行き、家にいたおばあさんを食べてしまう。そしておばあさんの姿に成り代わり、赤ずきんが来るのを待つ。
赤ずきんはおばあさんの家に到着し、あの有名な質問を繰り返し行った結果、おばあさんに化けていた狼に食べられてしまう。
満腹になった狼が寝入っていたところを通りがかった猟師が気付き、狼の腹の中から二人を助け出す。
その後、赤ずきんは狼のお腹にたくさんの石を詰めて殺すというストーリーだ。

 

この物語は以前からたくさんの疑問があった。

まず狼に食べられてからの生還は不可能だ。ヘビに丸呑みされたのとはわけが違う。

たが、これは関係ないから無視してかまわない。

疑問はなぜ、石を詰めて殺さねばならなかったのかだ。

僕は「赤ずきん」を初めて読んだときからこれが疑問としてあった。

これは明らかな殺意と少しばかりの好奇心があってのことで、赤ずきんはヤバイ奴だなぁと子どもながらに感じていた。

だからか、この裁判になる前から、僕は赤ずきんに有罪判決を下していたのだ。

 

しかし、本書を読んでわからなくなってしまった。

裁判の争点は事実の誤認でもなければ、情状酌量でもない。ましてや正当防衛でもない。

弁護士側の訴えは心神喪失による無罪だ。

これにはつい、その手があったかと唸ってしまった。

 

たくさんの証拠や証言があるのだが、1番重要なのは精神科医による「精神鑑定報告書」だろう。

これによると赤ずきんは狼の胃の中で低酸素脳症に陥り意識がもうろうとしていた。また、強い心的外傷により、善悪の判断がつかなくなったとのこと。

だから残虐な殺し方をしてしまったのだと、弁護士は主張している。

 

僕は本書を読んで初めて知ったことがある。

それは精神鑑定の結果=判決ではない、ということ。

この報告書は証拠のひとつであり、裁判では採用しないこともできるらしい。

仮に、赤ずきんが精神科医に嘘をつき、騙して心神喪失と判断されても、裁判官や裁判員はそれを認めないとし、有罪とすることもできる。

 

散々悩んだ結果、僕の心は4:6で無罪に傾いた。

本書にある証拠だけでは無罪で仕方なしかと思う。

検察はわざと残虐な殺し方をして、心神喪失を得ようとしたと主張するが、赤ずきんの近くには猟師が狼の腹を裂いたときに使ったナイフがあった。

これで狼を殺し、正当防衛を主張する方が無罪になりながらも狼を殺すことがしやすくはないだろうか。

あと、精神鑑定ではときに間違いも起きるのかもしれないが、なんか強い証拠な気がしてしまう。

よって、赤ずきんは無罪!

なんかスッキリはしないけれども。

 

ただ、げんこつくらいの大きさの石をたくさん集めて狼の腹に詰め、雑に縫合する赤ずきんはヤバイ奴だ。

これを猟師や他の第三者が止められていたら悲劇は起きなかった。

おばあちゃんは鬼気迫る表情の赤ずきんを見ていることしかできなかった。

なんともやりきれないね。

昔話法廷Season4

昔話法廷Season4

  • 作者:坂口 理子
  • 出版社/メーカー: 金の星社
  • 発売日: 2019/09/10
  • メディア: 単行本