スーパーノヴァの読書日記

主に本について書いています。たまにドラマや音楽や映画についても語ります。気軽にコメントいただけたら幸いです。

「科学オタがマイナスイオンの部署に異動しました」朱野帰子 ②

①ではおかしなことばかり言ってすみませんでした。

今回は本書のことに則して進めていきます(^^)

 

また余計なことを書かないようにあらすじは背表紙に任せましょう。

《電機メーカーに勤める科学マニアの賢児は、非科学的な商品を「廃止すべきです」と言ったばかりに、商品企画部に島流しになる。「マイナスイオンなんて存在しません」。正論を主張する彼は、やがて鼻つまみ者扱いに⁉︎

自分の信念を曲げられずに日々会社で戦っている、すべての働く人に贈るお仕事小説。》

 

背表紙から僕が伝えたいのは2点ある。

ここからはで・ある調でいくのである(^^)

ひとつは《マイナスイオンなんて存在し》ないのは正論なのかどうかだ。

世の中は確かに間違った科学が浸透している。

納豆を食べると巨乳になるし、コラーゲン入りの化粧品を使うと肌がぷりっぷりになるし、マイナスイオンは身体にいい。

僕もバッティングはボールを上から叩けと教わった。

しかし、上に挙げたのは事実とは言い切れないというだけだ。科学の世界では「絶対」という言葉を使わない。

賢児はマイナスイオンのドライヤーが身体に効くとうたう会社が許せない。

ならば、マイナスイオンに変わる効能を期待できる物質を探すか、マイナスイオンを作ればいいのにとは思うが、それもできないジレンマに苦しんでいる。

本書の大筋は賢児が会社の役に立てるかどうかだ。

会社の文句は言うし、金も稼がない、ならば会社に必要とされないのは当然だ。

賢児が会社で生き延びることができるのか⁈

 

ふたつ目は《すべての働く人に》と書かれていることに注目した。

これは過大広告と思う人もいるかもしれないが、僕が読み終えた感想としては確かに働いたことのある人ならば、共感できる内容が盛りだくさんだった。

どんなお仕事でも、自社のすべての商品を完璧だと信じ、自信をもって働いている人の方が少ないだろうし、自信がありすぎる人はなんか危険だ。

 

本書が科学の話だけだったら、カテゴリーをベストオブベストにしない。

本書のテーマは科学VS感情だ。

内容の大筋は賢児の職場での苦悩だった。これは正直言ってどうでもいい。仕事で悩みがない人など、ほぼいない。

もうひとつの大筋に感動したのだ。

もうひとつは賢児の姉の美空の妊娠をめぐる科学だ。

姉の美空は光合成のあたりで、理科についていけなくなっている。

賢児に教えてとお願いするものの「葉緑体という言葉を使うなー」と賢児をぶっとばす(笑)

そんな愉快な美空は妊娠して里帰りをしている。

賢児とは大人になってもケンカばかりだ。科学の刃を振りかざす賢児とは上手くやれない。

美空は妊婦になり、たくさんの情報を仕入れるようになったし、母親の先輩友だちからも情報をもらう。

そこで聞く科学とは胸を痛めるものばかりだった。

 

美空のお腹の中の子は逆子だった。逆子についての知識はなかったが、帝王切開での出産をしないといけないほど、大変らしい。

通常の分娩でも心配事は多いのに、帝王切開だと更に心配だろうと思う。

しかも帝王切開では母性は芽生えないとか、我慢できない子が生まれてくるとかの情報を、美空は入手してしまう。

子が産まれたあとも大変だった。美空は母乳が出づらい体質だったのだ。それも帝王切開のせいだと考えてしまう。

美空は産後院に行き、指導を仰ぐが、そこでの先生の言葉がひどかった。

《最近増えている子供の学力低下や学級崩壊なんかも、楽をしてミルクをあげてしまう母親が増えているからだって、科学的な指摘をする専門家もいるのよ》と。他にも母乳で育てないとちゃんとした母親になれないだの。

僕の科学観というか科学勘をとぎすますと、そんなことを言う奴とはすぐに付き合いをやめるべきだと思う。

科学どうこうじゃなくて、その人がストレスだ。ストレスが身体に良くないことは証明されている。

《ミルクで育てるなんて楽をしたら、まともなお母さんになれない。

あきらめちゃダメなんだ。この子をちゃんと育てたいのだ。自分はできのいい子にはなれなかった。自分みたいにはしたくない。》

という美空の言葉には涙が出た。そう思える時点で立派な母親じゃないですか。自信を持っていい。愛情がなによりも強い科学だ。

 

他にも父の死とがんの関係、(恐らくはSTAP細胞のことだと思われる)嘘で塗り固めた科学者の話、お金と研究の話も面白かったです。

あと、ドラゴンクエストの「賢者の石」についても楽しかったです(^ ^)

科学が好きな方にも、苦手な方にもおすすめの小説でした。

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