スーパーノヴァの読書日記

主に本について書いています。たまにドラマや音楽や映画についても語ります。気軽にコメントいただけたら幸いです。

「お父さんを冷蔵庫に入れて」加藤鉄児

副題「桐谷署総務課渉外係」

 

本書の著者の加藤鉄児さんについては以前に一度だけ書いたことがあります。

それは「10分間ミステリー THE BEST」 というアンソロジー小説の中の「五六」というお話でした。

これには電車の中なのに大号泣でした。

詳しくは7月21日で書きましたが、百人一首の歌番号を使った名作でした。

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僕は宝島文庫から出るアンソロジーは大抵読んでいます。

ここで、気になる著者を見つけて読みたい本リストを潤すようにしています。

そうして出会ったのが、本書でした。

 

あれだけ感動できる本を書ける人が普通の警察小説を書くはずがないと思っていたら、案の定でした。

まず、タイトルが面白いですね。

お父さんを冷蔵庫に入れるべき状態が分からず、思わずにやけてしまいました(^^)

それと警察がどう関係するのか。渉外係とはなんなのかとても気になりました。

 

あらすじはこんな感じです。

《稀代の名俳優・十文字豪の「遺体」が誘拐された?!テレビ中継される葬儀を前に奪還が急がれるが、豪の娘で「刑事嫌い」の凛子は刑事課の協力を断固拒否。代わりに通称「クレーム係」こと総務課渉外係の吉良と、新人の真知子が犯人との交渉役に駆り出される。5761万7559円との奇妙な身代金を要求されるなか、刻一刻と腐敗が進む「人質」の奪還は間に合うのか!》

今回はアマゾンからあらすじを取り寄せました(^ ^)

 

これはお父さんの遺体が誘拐された話です。

正確にいうと、誘拐ではなく窃盗ですね。刑事たちも本気で捜査するのか迷ってしまうような事件です。

本書の題意は《お父さんを冷やして!》ということだったんですね。

腐敗が進む遺体を抱える犯人は奇妙な金額を要します。

それにはどんな理由があるのか。まぁ理由があっても誘拐はいけません。

 

捜査する側も面白いです。

吉良はとても仕事ができる男ですが、なぜかクレーム係に甘んじています。

真知子は僕から見ればわちゃわちゃしてる風にしか見えなかったです(^_^)

刑事課の捜査が被害者から拒まれるなか、スパイが渉外係に送り込まれます。

「僕も捜査を手伝います」という若造に対して、吉良は無理難題を押し付けいじめます。これにはわけがあるのですが、ちょっと気の毒だったかな^^;

事件の内容のせいもあるのですが、基本的にはコメディ色の強い作品です。

 

この事件は長期戦となれば、ほぼ確実に警察の勝ちです。

誘拐の成功率はものすごく低いですし、犯人も遺体の処理にも困るでしょうからね。

葬儀を送らせればいいだけなのに、どうしても遺族はそれをしない。身代金を払わないという方法もあるのに、それもしない。

犯人はよっぽど頭がよいのか、裏の事情を知っているのか物語の後半までずっーと犯人のペースです。

ここで、僕のひねくれ意見ですが、誘拐のある小説はページ数の使い方で展開が読めてしまいます。

東野圭吾さんの「ゲームの名は誘拐」とかですね。

でも本書はそれを覆してくれました。

ラストのほっこり感は加藤鉄児さんにしかできないことのように思います。

なかなかの名著がまだまだ宝島文庫には眠っているみたいです。僕の本棚は宝島文庫であふれてしまいそうです。

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