スーパーノヴァの読書日記

主に本について書いています。たまにドラマや音楽や映画についても語ります。気軽にコメントいただけたら幸いです。

「謝るなら、いつでもおいで」川名壮志

副題「佐世保小六女児同級生殺害事件」

 

《「私がカッターで切りました」。幼さを残す少女は動揺する大人を前に淡々と告げた。2004年長崎県佐世保市。小六の女児が白昼の校舎内で同級生の女児を刺殺した。11歳ーー少年法すら適用されず人殺しの罪に問うことはできない。だが愛するものを奪われた事実は消えない。苦悩する被害者家族、償いきれない業火を背負った加害者家族・・・それぞれの心のひだを見つめたノンフィクション》

始めに背表紙から概要を。

 

著者の川名壮志さんは新聞記者だ。

ある日彼は上司から突然の電話を受ける。

「娘が、死んだ」と。

近くの小学校には救急車が呼ばれ、支局内も慌ただしくなる。

被害者は上司の娘ということがわかる。娘さんと川名さんは顔見知りだった。

それから川名さんは事件の真相を掴むため、奔走することになる。

 

被害者の実名は公表され、被害者の父は記者会見を開く。

加害者の人権は徹底的に保護され、名前の公表もされず、更生を促すところにさえも行かない。再教育という形で施設に保護させる。

加害少女は成人しても、遺族に謝罪していない。

この事件は日本の公教育に多大な影響を与えた。

 

本として、第一部は事実の積み重ねだ。

たくさんの証拠、被害者の人柄、加害者と被害者の関わりなど、事細かに記されている。

第二部はインタビュー集だ。

【被害者の父として】【加害者の父として】【被害者の兄として】が載っている。

最後はエピソードだ。

 

タイトルは被害者の兄の言葉だ。

事件のとき、兄は14歳だった。

その日、突然、校長先生にに呼ばれ、Yahooニュースの記事を読ませられる。

すでに、妹の名前がニュースになっていたのだ。周りの教師が涙を流す中、彼はすぐには泣けなかった。

加害者の少女とは面識があった。一緒にスマブラで遊んだことがあったのだ。そして、彼女がやったと思った。妹と彼女はケンカしていたのだった。

ときは経ち、兄は高校を中退し、診療所をめぐるようになる。

少年法で守られている加害者を憎む気にはなれない。加害者は明らかに殺意を持ってしたことだが、罪の重さは理解できないと思ったから。加害者の親には怒りはあるが、憎むのは違う気がする。なんかイライラする。自分の中にだけストレスが溜まる。

さらにときは経ち、新しい高校では何度も単位を落としながらも大学へ進む。

高校ではドロップアウトした奴らが集まっていたから、彼女の気持ちが少しわかった気がした。行き過ぎちゃった子だったのかもなって。

《僕、あの子に同じ社会で生きていてほしいと思っている。でも、それにはまず、謝罪が必要だろう、とも思う。》と語っている。

《相手にウジウジと悩まれるのも嫌なんですよ。お互いに引きずりたくないというか。こちらも、今までのことを断ち切って前に進みたいという思いがある。諦めじゃなくて、結果として僕が前に進めるから、一回謝ってほしい。謝るならいつでもおいで、って。それだけ。》

こう思えるまでにどんな思いがあったのか、はかり知ることは、僕にはできない。

 

加害者には様々なことが言われている。

SNSにハマっていただとか、バトルロワイアルが好きだったからとか。

それらは要因にはなるかもしれないが、ヤバいやつを定型化したくなるのは危険な発想だとも思う。みんながみんなヤバいやつというのは僕の持論だ。

警察官よりも、裁判官よりも、著者の川名さんは真実に迫ろうとしている。このような本を読むとマスコミの悪口は言えなくなる。

エピローグ、川名さんはすでに成人している加害少女によく生きてほしい。と語っている。

《原稿はここで一度、区切りをつける。でも、この現実の物語の物語は閉じられることなく続いていく。物語は、たぶん、まだ終わらない。

それでも、僕はあの日のお兄ちゃんの言葉を忘れない。ずっと胸に刻みつける。謝るなら、いつでもおいで。》

f:id:oomori662:20191211213252j:image