スーパーノヴァの読書日記

主に本について書いています。たまにドラマや音楽や映画についても語ります。気軽にコメントいただけたら幸いです。

「ボッコちゃん」星新一

「ボッコちゃん」は50編が収録されたSFショートショート小説です。

星新一先生自らが収録作品の編集に携わっています。

だからなのか、ドラマ化・マンガ化作品が多数入っています。もしかしたら映画化したものもあることでしょう。

収録作品の「おーい でてこーい」は教科書にも載っていました。日本の教科書にもアメリカの教科書にもです。すごいですね。

本書には星新一先生の持ち味である発明品や宇宙での話も多数あります。

今回は本書で特に好きな作品について書きます。

 

「鏡」

星新一作品ではよく悪魔👿が出てくるが、大抵の悪魔は願いを叶えるかわりに魂をとる。

「鏡」にも悪魔が出てくるが、星新一作品史上最弱だったかもしれない。

 

夫は有名企業の課長、妻は声優の夫婦が主役。

13日の金曜日、夫は悪魔を呼び出す儀式をする。その方法は合わせ鏡によるものだ。

夫は悪魔を召喚し、捕まえることに成功する。

悪魔はしっぽこそはえていたが、形は人間に似ていて、ネズミよりいくらか大きく、猫よりはいくらか小さかった。

「ひとつ、なにかやってみろ」と夫。

「だめです。なにもできません。逃して下さい」と悪魔。

この悪魔は僕だったら一緒に楽しく生活したいところなのだが、夫はけとばしたりタバコを押しつけたりしていじめる。

夫にはストレスがたまっていたし、キューキュー言いながら泣く悪魔はいじめがいがあった。

夫はハンマーで悪魔の頭を砕くこともあった。しかし、悪魔は翌日には復活するのだ。

いいストレスのはけ口を見つけた夫は部長に昇進する。

その姿を見ていた妻は「ちょっと面白そうね。あたしにもやらせてよ」と、悪魔を針を刺したり、ハサミでしっぽを切り刻んだりした。

だんだんと悪魔へのいじめがエスカレートする夫婦だったが、そのおかげで夫婦仲も良くなってきた。

《このようにして、何ヶ月か経った夜。妻は寝る前に鏡台に向かい、髪にブラシをかけていた。悪魔はそのそばで、しっぽに結び目をつけられて痛がっていた。彼女はなにげなく、ブラシをかけ終わった髪を見ようとして、手鏡をとって頭のうしろにかざした。
その時。悪魔は突然、飛び上がって、手鏡の中に飛び込んだ。》

悪魔を失い、暴力の行き先がなくなった夫婦はお互いにののしりあった。

《そのうっぷんを晴らしてくれるものはなかったが、二人の身に深く染み込んだ習慣は消えてはいなかった。いつの間にか、夫の手には、ハンマーが、妻の手には、ハサミがあった。》

ラストには静かになった部屋を描いています。


「鏡」のレビューには悪魔とは己の心のことで、鏡とは自分を映し出す道具なのだ、という意見が占めていたが、僕はこれを実際にあり得る事件と捉える。
何気ない一文なのだが、悪魔へのいじめが始まり《何ヶ月か経った夜》ならば、起きそうな気がする事件だ。


表題作の「ボッコちゃん」は稀代の美女を扱う話です。
彼女に恋する青年の歪んだ愛は周りを巻き込みます。
こちらは美女の扱いが見事です。ボッコちゃんは《完全な美人》と書かれているので、いつの時代も美人です。
本書は1971年に発行されましたが、《完全な美人》と書いておけば、永久に美人です。永久に星新一作品は愛されることと思います。

 

僕は星新一作品を読むときは表題作から読みます。その方が、本のコンセプトがより分かる気がするからです。

本は順番通りに読まなくてもいいことを覚えたのは星新一先生のおかげです。

本書は短い話が多いので、星新一作品が初めましての方には特におすすめです。色々な出版社からでているかもしれませんが、新潮文庫のがいいと思います。

ちなみに僕は新潮社のまわし者ではありません(笑)

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