スーパーノヴァの読書日記

主に本について書いています。たまにドラマや音楽や映画についても語ります。気軽にコメントいただけたら幸いです。

「さよなら、田中さん」鈴木るりか

まずは僕の自慢話です。

僕の書店員時代は読書好きが皆に知られていて、文芸書担当の方から見本を渡してもらうことがありました。

それは発売前に読んで、気に入ればおすすめ文やPOPを書き、気に入らなければ担当者に愚痴を聞いてもらう仕事ですね^_^

ある日、二冊渡されたうちに本書がありました。

うち一冊は喜多喜久さんの本でしたが、それは、いや愚痴はよしておきます。

ここからが自慢です。

なんとこの本のヒットを当てました。担当の方に「売れるのでいい所に置いた方がいいですよ」と言いました。

本書は全国的にヒットして、重版をかさね、次回作まで出ました。

ヒットを当てたよ!ほめてほめて。

 

すいません。取り乱しました。

特に良い点は筆力の高さです。それは石田衣良さんやあさのあつこさんが認めるほどです。

筆者は14歳の時本書でデビューしていますが、小学生のときに「12歳の文学賞」大賞を三年連続で受賞しています。

本書にはそのときに書いたものも含まれています。

物語自体は強い衝撃もなければ、心に刺さるような一文もないのです。

しかし、筆者がのびのびと、それでいて自身の体験談を思わせるような文章でスラスラと読むことができます。

もうこの段落にべた褒め情報を詰めています。

語り出すと止まらないので、あとひとつだけ良かったところを書くことにすると、「中学生が書いたような内容であることがすぐにわかり、それが心地いいこと」です。

背伸びをせずに自分の気持ちを自分の言葉で書いています。それが、圧倒的なリアリティを生んでいるのです。

 

物語は小学生の女の子「花ちゃん」を主人公に、その日常を描いています。

花ちゃんは生まれたときから父を知らず、母は工事現場で働いています。貧しいけれども笑いの絶えない明るい親子です。

内容は五編からなる短編集です。

ひとり親であることや両親の離婚について子供の目から描いた「いつかどこかで」

花ちゃんと母を、彼女らとは正反対の環境にある同級生から見た「さよなら、田中さん」

この二編の小説に挟むようにして、花ちゃんと母を描いた短編が三つです。

全五編がたがいに絡まりあう構成となっています。

 

登場人物たちの会話は学校生活をよく表しているように思います。「エロ」とか「悪魔の証明」とか覚えたら使いたくなるような言葉な気がしますね。

語り手の交代や終わり方もお見事です。

図書館や学級文庫での導入率を100%にしたい小説です。

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