スーパーノヴァの読書日記

主に本について書いています。たまにドラマや音楽や映画についても語ります。気軽にコメントいただけたら幸いです。

二歩前を歩く者の正体とは

「二歩前を歩く」 石持浅海

 

同じ本について書くのは何度かやりましたが、今回は特別な気持ちです。本書については4月13日、第一回目で書きました。

一度直しましたが、当時の気持ちと反省する気持ちを残すために内容を大きくは変えませんでした。

振り返って見てみると今の僕の方が成長している気がします。

そこで、今回は短編の中のひとつを掘り下げて書いてみたいと思います。

その前に簡単に本書の概要をお伝えします。

六つの話から成る本書は、どれも不思議なことが起こります。

 

家に帰るとスリッパが動いている「一歩ずつ進む」では家主に何かを思い出して欲しい。

「四方八方」では家の壁に亡き妻の長い髪を埋め込んだ男が出てくる。死期が迫る女性との結婚の秘密とは。

「五ヶ月前から」は部屋の電気が勝手につくようになった。検証を重ねると、オンになるスイッチとオフのままのスイッチがあった。

何者かが勝手にガソリンを補充している「ナナカマド」ではガソリンの存在意義にまで迫っている。

「九尾の狐」ではホーステールに結ばれている先輩の髪が逆立つのはどんな条件のときなのかを探る。

どれも小泉という研究者が出てくる。小泉は同僚たちから相談を持ちかけられ、不可思議な出来事を科学的なアプローチで解き明かす。

超常現象の法則が判明した時、その奥にある「なぜ?」が解き明かされる。

 

基本的には幽霊が出てきます^_^

しかし、何者か(幽霊)には動機があって不思議な事象を起こしているという考え方がとても面白いです。

表題作の「二歩前を歩く」での小泉は飲みの席で同僚から相談を受けます。

ここからは「二歩前を歩く」の内容をたっぷりと書きます。主な登場人物は僕(この話の主人公)と小泉です。

 

冒頭は僕と小泉の飲みのシーンです。

《「最近、道で他人に避けられているような気がするんです。こっちはごく普通に歩いているつもりなのに、向こうから来た人が、僕を避けるんです。」》

ここを笑い飛ばさない小泉は検証を始めます。

お前は怖い顔ではないし、老けてもないし、太ってもない。それなら、会社の中はどうなんだ?本社の連中は、お前を避けたりしていないのか?廊下ではどうなんだ?いつからそうなんだ?

情報を大事にするのは小泉が研究者だからなのでしょう。

この現象は先月からです。と僕は答えた。

先月からだとお前が海外出張のときか。どんな国だったんだ?

《「初めて行った国でしたけど、もうごめんですね。新興国ですから仕方がないとはいえ、汚いし、貧富の差は激しいし、治安は悪いし。」》

じゃあ現地から悪霊が憑いてきたんじゃないか。よし、実験してみるか。繁華街だから人とすれ違うだろう。

前からOL2人組が歩いてくるが、5メートルほど手前で横にずれ、道を空ける。このあと小泉が僕とすれ違う実験をする。

お前が避けられる理由がわかった。お前に向かって歩いているときに、ふっと距離感が狂ったんだ。お前からもう1メートルから1メートル半ほど前に、人の気配を感じた。

《僕の二歩前を、見えない誰かが歩いているというのか。そして通行人は、その気配を感じて避けたというのか。とても信じられない。》

その後の検証で誰かは屋外にいるときのみ現れることがわかります。

翌日、僕が外回りをしていると小泉から電話があった。

小泉は言う。二歩前の気配は、いわば予感なんじゃないか。人間は他者の気配を感じることができる。また周囲の動きを無意識のうちに予想しながら行動する。正面から近づいて近づいてくる人間は予想したんだ。実体のお前が、すぐに気配に追いつくと。

小泉はトラブル対応で忙しいからまた後でかけると言う。

とにかく、気をつけろ。いいか。お前に憑いている悪霊だか相棒だかは、お前の二歩前にはいない。そいつがいるのは、二歩後ろだ!

この後、横断歩道に立つ僕の背中を強い力が押した。

そして外国でしてしまったことを思い出す。

 

こんなところにしておきます。

とにかく小泉の論理的思考力の高さには驚かされます。

科学者なのに霊を否定しないところも素敵なのです。

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