スーパーノヴァの読書日記

主に本について書いています。たまにドラマや音楽や映画についても語ります。気軽にコメントいただけたら幸いです。

「弔い花 長い腕III」 長岡草志

以前に「家と呪い」で紹介した「長い腕」の第3弾です。

「長い腕」は建築によって呪いをかける近江敬次郎の復讐を島汐路(しましおじ、女性です)がとめるといったストーリーです。

建築による呪いはとてもリアリティがあります。最近の研究によると、人はストレスで病気になったり、最悪の場合は死に至ったりすることもあります。

さらに、歪んだ家に住む人は発狂しやすいというデータもあります。

近江敬次郎はそこをつきました。

 

舞台は愛媛県の早瀬町です。

ここは閉鎖的な町で六つの家の力が強くあります。

その町では豪族たちの気に入らない者は容赦のないいじめを受けてしまいます。

昔はそのようなことが多くあったのでしょうか。

喜助一家はいじめにあい、一家心中を図ります。しかし、幼な子である鶴太だけは生き残ります。

鶴太は江戸に流され、棟梁(大工)となり、近江敬次郎と名乗ります。

大工修行の成果はとてつもないものでした。曼珠沙華の複雑な作りを木で彫れるほどです。

後に早瀬に帰ってきてその手腕が認められて豪族たちの家を作ります。

父を殺された、復讐の始まりですね。

木の経過年数による歪みまで計算して呪いの家を作ります。後に多数の死者が出るほど、呪いは強いです。

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(曼珠沙華の写真です。ヒガンバナが正式な名前ですが、弔い花とも呼ばれます。)

 

1巻の「長い腕」は同僚の転落死と早瀬町で起きた猟銃での殺人事件の共通点に島汐路は気付き、捜査します。

どのレビューを見ても中盤までのゲーム制作の話は余計だと書いてありましたが、僕は結構好きでした。

といっても殺人事件は一切無しにしてゲーム制作小説として書いて欲しかったですが。

2巻の「呪い唄 長い腕II」はかごめかごめの唄に秘められた徳川埋蔵金と近江敬次郎の呪いの話です。

時代小説が半分を占めていて鎖鎌使い対武士はとても面白かったです。

こう書いてしまうと何の話かわからなくなりますね。しかし、単なる推理小説じゃないのがこのシリーズの特徴です。

他の作家だったら書かないようなエピソードを延々と続けます。

 

さてようやく本書の話です。

本書では早瀬町で起きた殺人事件を島汐路が推理するのですが、200ページ読もうと推理はほとんど進みません。

代わりに過去、近江敬次郎と関わる大工の話が続きます。

嘉永元年、喜助の最後を描きます。

明治26年、大工同士の対決を描きます。

ここで近江敬次郎は立派な曼珠沙華を彫って力を示します。

昭和20年、早瀬町対愚連隊です。元海軍の大工が早瀬町の助っ人に立ちます。

現在パートは近江敬次郎の企みが世間に知れ渡り早瀬狩りが流行ります。これも呪いなのか。

最後は殺人事件を解決させますが、犯人や謎に深みはありません。

その分呪いの作り方は存分に載っていました。

 

このシリーズの総評としては時代小説やゲーム制作を書かせたら超一流なのだけども、時に読者を置いてけぼりにする印象にあります。

ミステリーが読みたい、謎解きがしたい、という人はどれも100ページ程しか読めないと思います。

筆者はきっと職人気質な人です。

「俺の作った作品が読めるかな」などと言っている気がします。売れる作品を作りたいというよりも自分の満足を優先している、そんな気がします。

そう感じられる作品に出会えることが、史上の喜びです。

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