スーパーノヴァの読書日記

主に本について書いています。たまにドラマや音楽や映画についても語ります。気軽にコメントいただけたら幸いです。

「WOLF ウルフ」 柴田哲孝

動物パニックものはとても好きなジャンルです。

以前に柴田哲孝さん著の「TENGU」について書きましたが、これは犯人の正体を人に言いたくなるランキング(僕が作ったランキングです)第1位でした。

TENGUでは道平という記者が主人公でしたが、道平は有賀雄二郎というルポライターに犯人についてのヒントをもらっています。

本書はその有賀雄二郎が主人公です。彼にはたくさんの動物パニックを解決させた実績があるとして、ウルフ事件にも駆り出されます。

 

ウルフについて書く前に今までのシリーズを話したくなりました。

有賀雄二郎が初めて世に出たのは1991年の「KAPPA」です。

これは茨城県の牛久沼にでた河童を有賀雄二郎が確保する話です。少年との友情の話でもありました。

沼の主=河童となる訳ですが、有賀雄二郎の自然と向き合う姿勢に感動させられます。

次が「TENGU」でちょい役ですね。

3作目の「DANCER」は少しSFが入っています。

ヒヒに踊り子の遺伝子が入ったら恐ろしい化け物になってしまいました。

ダンサー対愛犬ジャックは心を熱くさせました。

これは心臓移植を受けた方に心臓の持ち主の記憶が引き継がれてしまう現象についても書かれています。柴田哲孝さんの取材力に唸ってしまいます。

4作目は「RYU」です。

沖縄で龍🐉の目撃情報と被害者が出てしまいます。龍との戦いは本当に恐ろしいものでした。

恋人の志摩子との出会いもありました。

ちょっとネタバレすると龍の正体は体長20mクラスのあいつです。速いし強いです。

河童と龍はその正体にリアリティがあって、上質なフーダニット小説という印象にあります。

 

さて「WOLF」ですが、これは正体をあまり隠していません。

敵は大型の山犬、もしくはニホンオオカミとされますが、人を食すクラスの山犬は考えられないし、ニホンオオカミは絶滅しているはずです。

著者の柴田哲孝さんがそのような考え方かは分かりませんが、どうやら絶滅したとされている動物の生存を信じている節があります。

柴田哲孝さんも有賀雄二郎みたいに自然に生きる人なので、世界は広いことを自覚して、あらゆる可能性を考えていることと思います。

そして僕はそれが、とても好きです。

 

埼玉の秩父に突如群れで現れたウルフは次第に人を襲うようになります。

群れのボスはシヴァという名前です。シヴァは有賀雄二郎と激しく戦います。

シヴァは体重45kgを子どものときに越えるほどの大きさです。そんなのがいたら人間を襲うようになるのもうなづけます。

どのようにしてシヴァが産まれ、育ったのかも面白いです。

ときにシヴァは擬人化されて語り手となります。語り手をチェンジすることで、スピード感が増していきます。

ウルフの包囲網は警察や有賀の他に菰田という元自衛官もいます。菰田は日航機墜落の惨劇でひどいトラウマを抱えていて、酒による中毒症状に苦しめられていますが、愛犬とともにウルフを追いつめます。

柴田哲孝さんの必殺技として、事実と小説の融合があります。日航機墜落事故についてはリアリティたっぷりと書かれています。

そして本書は雄二郎の息子・優輝との和解の物語でもありました。

とてもスケールの大きい作品です。ノンフィクションが好きな方にもおすすめです。

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ウルフは角川文庫、カッパとリュウは徳間文庫、ダンサーは文春文庫、テングは祥伝社文庫から出ています。

本棚にどう並べようか迷ってしまいますが、色んな出版社を旅するところも柴田哲孝さんらしくて好きです。