スーパーノヴァの読書日記

主に本について書いています。たまにドラマや音楽や映画についても語ります。気軽にコメントいただけたら幸いです。

「タイニー・タイニー・ハッピー」 飛鳥井千紗

王様のブランチで紹介されてヒットした、飛鳥井千紗さんの出世作です。

飛鳥井千紗さんとは「学校のセンセイ」で初めて出会いました。

「学校のセンセイ」は学校の先生と恋をするラブストーリーでした。モデルのツィッギーを扱うあたりが新鮮で好感が持てたのを覚えています。

その後は飛鳥井千紗さんの本はひととおり集めましたが、石田衣良さんに似ているなという印象にあります。

どちらもベッドシーンが多めにあることと、「とても読みやすいのだが、最高の一冊にはならない」ところでしょうか。こうすると悪口みたくなってしまいますね。

弁解しますが、石田衣良さんの小説も飛鳥井千紗さんの小説も、僕の中ではごくたまに大ヒットがあります(石田衣良さんのは「4TEEN」とかです)。

だからこそ、この作家の本を集めてしまうのです。

本書はごくたまにある大ヒットでした。気づけば3回は読んでいました。

 

それでは本書の魅力を次々と書いていきます。

⚪︎本のタイトルがいい

タイニー・タイニー・ハッピーとは大型ショッピングセンターだ。略してタニハピとはネーミングセンスがいい。

⚪︎各章のタイトルがいい

8つの章からなっている本書はどれもタイトルがオシャレだ。

第1章は「ドッグイヤー」だ。他に、「プッシーキャット」、「ガトーショコラ」、「ワイルドフラワー」などがあり、どれもカタカナで統一している。

なぜかファッションセンスの良さを感じる。

⚪︎構成がいい

8人の語り手はみなタニハピと関係があり、どこかで繋がっている。

気になるあの人は次の章でも出てくるかもしれない。

これは僕だけかもしれないが、恋愛小説で長編は厳しいものがある。どこかで彼らの恋愛に興味を失えばそのあとは読めなくなる。

短編で彼らの生活の一部を切りとるから興味深いのだ。

⚪︎日常の一部、それも誰もが経験しうるところを描いている

第1章の「ドッグイヤー」は若くして結婚した夫婦の夫が語り手。

妻は雑誌にドッグイヤーをつけるのだが、僕はそれが嫌だ。けど言えない。

40ページの短い話の中で夫婦生活の綻びと再生を描いている。

この淡々とひとつの事象を取り上げる書き方は本当に見事だ。

各章を短くすることで読み手に考えさせる暇を与えずに気づけばタニハピの中に入っているような感覚にさせる。

320ページがあっという間に過ぎていく。もちろん1章ずつをていねいに読み込むのも楽しいだろう。

⚪︎新たな価値観の創出

僕のお気に入りは第3章の「ウォータープルーフ」だ。

俺の妹の彼氏の弟の彼女が(ちょっとややこしい)妊娠してしまったが、堕ろす前提の会議をする話。議題はお金ですな。

妊娠した彼女はウォータープルーフのマスカラをつけて話し合いに臨んでいた。

妹はそのことにプンプンだ。泣く準備をして会議に臨む女はろくなやつじゃないと。

男にはわからない化粧品の話をわかりやすく解説してくれたし、僕は妹が言うほどには泣く準備をしてきたことにはやな奴とは感じなかった。中絶については別に思うところがあるが。

そのあたりの男女間のギャップを感じたとき、僕はすごく楽しい。

読書とは新しい価値観を得ることだと思うからだ。本書にはそのような瞬間がいくつかあった。

 

最後になりましたが、表紙の女性が可愛かったことも含めて最高の一冊です。

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