「嫌われる勇気」 岸見一郎 古賀史健
大仰しいタイトルをつけてしまいましたが、心理学で世界を救うのは無理です。この世には心理学を知らない人の方が多いし、流派なるものが存在して心理学者同士でも争いがあるからです。
しかし、ものの見方を少し変えるだけで変わる世界があります。自分の周りの世界が変わります。次第に周囲の人が変わります。そんな意味で世界を救うです。
本書は強い劣等感を持つ青年と哲学者の哲人の会話で進みます。対話法はアドラーさんの得意分野だったみたいです。
《世界はシンプルであり、人生もまたシンプルです。》と言う哲人を青年は否定したがっています。
人の哲学を否定しようとする青年に腹が立ってしまう僕はこの青年にだったら嫌われてもいいです。
大まかなストーリーとしては青年は哲人との会話で青年の世界が変わるかどうかです。
彼には幸せになって欲しいものです。
特に僕の心に残ったのは
《トラウマは、存在しない》
《すべての悩みは「対人関係の悩み」である》
《承認欲求を否定する》
《「課題の分離」とはなにか》
《「勇気づけ」というアプローチ》
《「いま、ここ」に強烈なスポットライトを当てよ》
といったところでしょうか。
どれかにでも興味を持っていただけたら幸いです。
この中で僕が普段から意識していて、それが本書で認められた気がしたのは
《承認欲求を否定する》でした。
僕は販売の仕事が長かったので、教育を任されることが多くありました。
そこでよく聞く言葉が「お客様からありがとうと言われるのがやりがいです。」という言葉でした。
とても素晴らしいことなのですが、これを1番のやりがいにしている人は心配になります。人からいただく言葉がやりがいだと、どれだけ尽くしても相手に感謝されないとき、辛いですよね。
ただ、接客の基本は相手が感謝してもしなくても変わらぬサービスを提供することです。
変わらぬ自分を持つための工夫が必要な気がします。
野球のイチロー選手は自分が打ったヒットの数を数えていました。これは決して減ることはない、チームに貢献できた数字です。
僕も販売数を計算することと美しい売り場を作るのが好きで接客業を続けられてきたのだと思います。
受け入れられなかった経験も多いですが、何かを作り、検証することに喜びと楽しさがありました。
そんな自分の一部分がアドラーさんに認められた気がして、アドラーさんの他の言葉も素直に聴くことができました。
本書は香里奈さんが主演でドラマ化もしています。
彼女はナチュラルボーンアドラー(生まれつきアドラー心理学が身についている人)の刑事として活躍していました。
毎週のように出てくるセリフは「それは私の課題ではありません」でした。(僕が上司だったら「今日からあなたの課題に決めました」と返したい。)
香里奈さんのように言える人はかっこいいです。
僕だったら「あなたの仕事は私の仕事です」と言ったりとか新人を極限まで甘やかして結局自分の仕事を増やしたりしてしまいそうです。
まだまだアドラー心理学は身につきません。
世界を救うためにはもっとアドラーさんと親しくしなければと思います。