本書は表紙に似合わずミステリーの短編集です。著者の北山さんとは初めましてでしたが、多彩で表現力豊かな描写には驚かされました。
本書は5つの物語からできています。
4つ目の「終の童話」では登場人物たちは海外の方の名前を持っていました。
イタリアの古い村をイメージして読んでいると、賑やかで朗らかな町なのかなと思いましたが内容はなかなかホラーでした。
村には石食いという化け物(?)がいて人間を石に変え、食べます。
石にされた人間を治す者も現れますが、今度は石を壊す者も現れます。壊す人は身近な人を優先して治して欲しいのでしょう。
石にされた=死、という倫理観は正しいのか、壊す人は誰なのか、どうやって石から治るのか。
ファンタジーの雰囲気を持ちながらとてもロジカルで、ちゃんとミステリーなこの作風を好きな方は多いのではないかと思います。
一番良かったのは最初の「恋煩い(こいわずらい)でした。これはドラマ化もしています。
恋をしている女子が愛しの彼と付き合うためにジンクスにハマるという胸キュンなストーリーで、僕は読みながら恋が上手くいってほしいなどと考えていました。
ジンクスは校舎の東側の2階から3階に上る踊り場に大きな姿見があるのだが、午前零時に右側を空けた状態で姿見に写る自分の写真を撮ると運命の人が写るというありがちなものです。
この手の話はどこの学校にもありそうですね。
しかし、写真を撮るとき床が抜けて少女は命の危機にあう。
他にもいくつかのジンクスを間に受けて行動するものの、危険なことが起こる。
果たして少女は呪われているのか、命の危機には何か理由があるのか。
こちらは青春小説風のミステリーです。そして最後の一文が衝撃的過ぎます。
どこかでこれと同じようなことが起きているかもしれません。そう思うと恐怖です。
短編を読みたい方におすすめミステリーの紹介でした。