スーパーノヴァの読書日記

主に本について書いています。たまにドラマや音楽や映画についても語ります。気軽にコメントいただけたら幸いです。

「ぶたぶた日記」 矢崎存美

こんなに豊かなファンタジー小説を読んだことがなかった。

もふもふのぶたぶたさんがかわいいのが最高だったが、ぶたぶたさんの周りにいる人も愛おしい。

僕はSFに苦手意識があったのだが、これなら読める。

物語はエッセイ教室に通う6人の男女(この中にぶたぶたさんも含まれる。)がぶたぶたさんと出会い変わっていくというもの。

5人がそれぞれにぶたぶたさんについて語っているので客観的にぶたぶたさんというもふもふを堪能できる。

しかも、エッセイ教室という特性上ぶたぶたさんが書いたエッセイも何度か出てくる。それが、最高に楽しくて愛おしいのだ。

 

山崎ぶたぶたさんは義母(?)の代わりにエッセイ教室に通う中年男性だ。

ピンクの布でできたバレーボールと同じ大きさくらいのぬいぐるみの《人》だ。

しゃべるし、歩くし、酒も飲むし、仕事もしているし、パソコンを打つ姿がかわいいし。

叩くとホコリが出るからやめてと言っているので自分がぬいぐるみという自覚もあるし、何より!娘がいる。娘はすぐにぶたぶたさんの身長を越して今では一緒にお風呂に入るたびにぶたぶたさんを洗ってくれるみたいだ。

もうここまでくると本当に《人》だ。

まじめなぶたぶたさんのことだから税金も納めているのだろうし。

 

一番良かったのは最後の話かな。

ぶたぶたさんと同じエッセイ教室に通う中年男性の日比谷はリストラの危機にある。

もうエッセイ教室を辞めようと教室を抜け出すが、ぶたぶたさんがついていく。

 突然雨が降り(雨に濡れたぶたぶたさんの体重は2倍くらいになりそうだ。)、雨宿りするのだが、日比谷は急に自分がぶたぶたになる夢を見る。

夢の中では怖いことがいっぱいだった。

突然蹴られるは捨てられるは閉じ込められるは持って帰られそうになるわ。

もちろんこれは日比谷の夢の中での想像なのだが、普通の人との違いが大きいぶたぶたさんの苦労が大きいことは想像に難くない。

改札だってジャンプしないと通らないのだから。

しかし、ぶたぶたさんはとても穏やかで優しい。それは悪意もたくさん受けてきたが、それを上回る善意が彼を守っているのだと日比谷は気づく。

私も善意の人になろうと思えることで自分の心を命そのものを救うことになるのだ。明日から新しい仕事を探そう。家族のために、自分のために働こう。

ぶたぶたさんは特別なことをしていないのだが、見てると癒しと勇気をもらえる。

僕も街でぶたぶたさんにあってもフェイスブックには書かないでおこうと思った。

 

ねこねこネットワークもそうですが、なぜか矢崎存美さんとは相性がいいなと感じていたら矢崎存美さんは星新一ショートショートコンテストの優秀賞を受賞していたみたいですね。

星新一さんのSFはとても好きなので、少し同じ匂いがする本書を好きになったのは当然かもしれませんね。

本書と星新一さんの共通点はSFが当たり前にある世界を出来事やセリフを通して素敵な物語を生むところでしょうか。

ぶたぶたシリーズにはもっと早く出会っておけば良かった。今からでも取り戻せると思うので次は「刑事ぶたぶた」を狙います!

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