学園ものが好きです!と声を大にして言える僕ですが、本書はちょっと捻っていてそれが一層面白くさせていました。
「教場」は長岡弘樹さんの大ヒット作となりましたが、これはジャンル分けとしては難しいものでした。
警察小説とする人が多いですが、僕は最高の学園ものとして読んでいました。教官が常に退職届けを出しそうな雰囲気があるのには恐怖を感じましたが。
本書は警察小説と学園ものの良いところを詰め込んでいながらにして、それが見事にはまっているミステリーとなっています。
物語は現在、警察学校の教官の不審死事件を追う綾乃と五味ペアの捜査についてと過去、五味の1153教場の生徒だった時の話が交互に進められていきます。
それはどちらも謎と愛の匂いが濃い、豊かなストーリーでした。
最初がお見合いパーティーから始まるのがいい。府中署に勤める綾乃は捜査一課の五味と出会う。晴れて縁談とはならなかったものの綾乃は五味の娘と仲良くなる。
(この娘に隠された秘密が本書に深みを持たせている)
二人は警察学校の教官・守村が首吊り死体で発見された事件で再会し、ともに謎を追うことになる。
一度は自殺とされたものの、死体からは筋弛緩剤が見つかり殺人事件の可能性も出てきた。容疑者は五味のかつての教場仲間。そして守村も同じ教場仲間だった。
五味と綾乃はかつての仲間たちを調べ始める。
過去のパートでは警察学校の1153教場で五味を中心にたくさんの出会い、また、たくさんの事件について語られている。
恋心を抱いた同期、幽霊騒ぎと自殺した問題児。当時の出来事がいかに守村の死に関わっているのか。
どちらのパートもタイトルにふさわしく、教育がテーマだと感じました。
過去パートでは警察官として生きていく自分と強引に向き合わされるし、現在パートでも五味は教場での授業に参加してある生徒に退職届けを渡す。
厳しい授業と学校生活を考えたときに、警察学校には入りたくないなぁという思いと警察官に対しての尊敬が増しました。
そしてどちらにも愛する女性を守りたい男が描かれています。
女性作家ならではの繊細な表現に感動しました。
表紙を読了後に眺めると初めて手に取った時と少し違った印象を感じると思います。
その仕掛けも見事でした。