本書は書店員時代に営業の方から強く勧められて大きく展開したところそれなりのヒットを記録した。
しかし、僕の中ではあまり良い印象になかった。もちろん売り上げが高いのは素晴らしいことだし、内容も良かったのだが売り方にひとつ気にくわないことがあった。
まずは背表紙を抜粋する。
神様のような清廉潔白な教師坪井誠造が逝去した。その通夜は悲しみに包まれ、誰もが涙した。・・・のだが、参列者たちが「神様を」を偲ぶ中、とんでもない疑惑が。実は坪井は、凶悪な犯罪者だったのではないか・・・。坪井の美しい娘、後輩教師、教え子のアラフォー男性と今時ギャル、ご近所の主婦とお笑い芸人。二転三転する彼らの推理は⁉︎
どんでん返しの結末に話題騒然‼︎第34回横溝正史ミステリー大賞《大賞》受賞の衝撃ミステリ!
内容は以前このブログで紹介した「キサラギ」に少し似ている。
一人の神様のような人間について各々の視点で見えたことを話し合う。それは主に事件が起こる話だ。神様の周りでは不思議な事件ばかり起こる。
一人では分からなかった真実がみんなでなら分かる。
この手のミステリーがつまらなかった試しがない。
さてここから問題提起だ。
背表紙のあらすじの部分で見たくない一文があった。
それは「どんでん返しの結末」という部分。帯にもどんでん返しが強調されていた。
どんでん返しがあるということがわかって読んでしまうと気になるのは残りのページ数。
残りのページ数でこの展開でいくとこうひっくり返るというのがわかってしまうのだ。
どんでん返しと書いておいてどんでん返しがないのが本当のどんでん返しだと思うのだが。
今回は愚痴ばかりですみませんでした。
最後は今回の愚痴ともつながる、ネタバレについての僕の見解です。
僕の中ではネタバレは避けるものではなく、常に側あるものです。今の時代常に近くにスマホがあるので、調べれば(求めれば)親切な方が推理小説の犯人を教えてくれたりもします。
実際僕は推理小説の犯人を教えられても楽しく読むことができます。犯人に興味がないということもありますが、小説の楽しさは書き方による部分が大きいと考えているからです。
逆を言うとネタバレされて面白くないと感じてしまうものは魅力が足りないのかもしれません。
「アベンジャーズはヒーローが活躍する話だよ」と言われ「ネタバレすんなよー。観る気失せたわ」なんて言う人はいませんよね。言う人がいるとすれば、その人はヒーローに魅力を感じていません(笑)
本書の内容ではどんでん返しを強調しない方が、魅力を伝えられたと思うので残念でした。どんでん返しと書いた方が売り上げが期待できるのは分かるのですが。
最近では書く立場になってこの問題とは真摯に向き合わなくてはいけないなと考えています。
具体的には読み手になってみて、このブログは面白いか、紹介された本が欲しくなったかどうかを気にしています。
ネタバレは本の核をつかず、魅力を感じられるようにを心がけています。
さらには紹介する本の筆者の気持ちも考えます。
どこを伝えてどこを隠していて欲しいか、書いていないけど伝えたかったところ、私(筆者)にしかできないことなどを推敲して世に出すようにしています。
さらに皆様の読書生活が楽しくなるよう努めますので、これからもよろしくおねがいします。