僕は東京の中野出身なので、環状8号線とは縁が深い。特に本書にでてくる荻窪や高円寺は住んでいたこともあるくらいだ。
色々な恋愛短編集がある中で土地に注目する小説は珍しい。
本書は幸せへ遠回りしてしまう女性たちの話を集めた短編集となっている。
語り手となる女性6人はみんな環状8号線を中心にして少しずつ繋がっている。
荻窪で暮らす劇団員の真紀はバイト仲間に片想い中。彼には彼女がいるのに想いを断ち切れない。
八幡山で同棲中の絵梨は彼に暴力を振るわれているが、今の生活を手放せない。
二子玉川の高級マンションに住む専業主婦の芙美は夫の不倫に苦しんでいる。
色んなタイプの女性がでてくるが、悩める女性たちにはあまり共感はできなかったかな。
僕は女性の味方でありたい!とは思うもののたまに味方になりきれない時がある。
不倫はやめてと強く言えばいいし、暴力野郎なんかは警察に突き出してしまうか、すぐに別れてしまえばいいのにと思ってしまうのは当事者ではないからなのだろう。
そんな簡単にいくわけないじゃないと怒られてしまいそうだから何も口に出せないのが僕なのだろうと思う。しかし、本書に出てくるような男にはならないぞ!と参考にはなる。
一番良かった話は八幡山の絵梨の話かな。
ドラマ化が決定している文庫本だったので、絵梨を倉科カナが演じることがわかっていた。
僕はキャストを自分で当てはまることも好きだが、決まっているのであればそれに従うようにしている。それは製作者の想いを感じながら読みたいからだ。
話は戻って絵梨の話とはならずにこの辺りでもう僕の中では倉科カナの話になっている。
そんな訳で倉科カナさんに暴力を振るうなぞ許せん💢という気持ちですいすいと読み進めることができた。
DVを友だちに隠してしまう気持ちは何となくわかる気がするし、今日は殴られない日という特別な状況にはリアリティがあった。
そして最後のアクションシーンにはドキドキしっぱなしだった。
恋愛にはドキドキが大切とは聞くものの本書ではアクションシーンのドキドキが印象的でした。
もしかしたらドキドキが本書のことを好きにさせてくれたのかもしれません。
どちらかというと女性の方におすすめの一冊です。