「老後の資金がありません」 垣谷美雨
皆さまは老後の資金は貯めていますか?
僕はまだ貯められていません。考えたこともないくらいです。
年金制度に頼りたいという気持ちは薄いものの全くもらえないのは嫌です。
まだ僕のまわりには備えていない人の方が多い気がするのですが、それは僕がまだ世間的には若いからでしょうか。
本書の主人公は50代の主婦の篤子。
篤子にはお金にまつわる悩みが次々と襲いかかってくる。
娘の派手な結婚式や舅の葬式の費用の捻出。それに加えて夫婦揃っての失職もある。
どれも身近に起こりそうな問題だけを扱っている。
この年代の女性は悩みが多そうだ。だからこそ篤子を主人公に据えたのだろう。
とても憂うつな展開が続くが小説としてはあまり悲観せずに読むことができた。
僕の先読み能力が本書はハッピーエンドで終わる予感がしていたからだ。読んだ人の判断は二分化されるだろうが、僕の中では読後感の良さが最高級のものとなった。
ただ、二点気になるところがあった。
一つは篤子は出したくないお金を出し過ぎていないかということ。
夫が見栄を張ったり、相談に乗ってくれなかったりする要因はあるが、それでも大金を出す時に自分の意見を言えないものかな。
僕も女性とご飯に行くと予算が厳しい時でもおごってしまうのだが、そんな気持ちと同じ感じなのかな?
もう一つは夫の退職金について。
夫は会社の再建にともない辞めることになったがその時に退職金が出なかった。
これは僕の将来をとても不安にさせた。
垣根涼介さんの「君たちに明日はない」(←辞めさせ屋の話です。泣けました。)ではクビの扱いでも退職金をたっぷり出していたのだがその時とは時代が違うということなのか。
夫は再建の前に辞めることになっていたら退職金をもらえたのだろうか。
そうすると今のサラリーマンには辞め時を測る力も必要になるということなのか。
ただ会社のピンチに退職金目当てに辞めるというのは薄情な奴だと思われないか。
大金がかかる時には自分の意見を言った方がいい気がするけど、実際には言えない気がする。
うーむ。わからない。これは奥さんには相談できない内容かもしれない。けど、何で言ってくれなかったのって怒るだろうな。うーむ。
あれ、いつのまにかグチみたいになってしまっていましたね。
やはり本書で僕の不安が引き出されてしまったようです。
どんな老後になっても大好きな本に囲まれていたいものです。