「リケコイ」 喜多喜久
この表紙に一目惚れして買ってしまった一冊。
表紙だけでものすごい数の期待感が高まる情報があったのだ。
まずタイトル、「リケコイ」は石持浅海ばりの人の恋路を論理的に解明しそうな知性がある。
筆者の喜多喜久はこのミステリーがすごい大賞をとったことがあるので、いつか読んでみたかった。
表紙の女の子は知的で清潔感があってとても好みだ。
白衣を着ているから研究者なのかもしれない。
メガネ女子なのはやり過ぎな気もするが、男子心をくすぐるのは間違いないだろう。
男が少しバカそうなのもいい。
大人しい男と天真爛漫な女の子は鉄板の組み合わせだが、その逆でも面白そうだ。
いざ、読み始めるとひどかった。
大学院生の森くん(男の方)はモテない、彼女いない、性欲はある、これはよくいる男として仕方ないのかもしれないが、何かが余計な気がする。
羽生さん(女の子)は卒業研究で森くんに指導を仰ぐ。
恋が生まれそうな展開だが、早々に羽生さんが彼氏をつくる。
一度告白した森くんは往生際が悪く、「その彼氏と付き合ってなかったら俺の告白にOKしてた?」と聞くが、羽生さんは「たぶん、はい」と答えている。
小悪魔的なキャラを想像できなかっただけにショックを受けた僕は森くんほどではないが、落ち込んでしまい、本書に希望を感じなくなってしまった。
他にも羽生さんが森くんに彼氏とのセックスの話をしたり、合宿で乳繰り合ったりとこれが現代っ子の特徴だとしたら相当嫌だなと思えるエピソードが続く。
極め付けは学会の発表で同じホテルに泊まる時、森くんは羽生さんの部屋を訪ねてドアの前で土下座する。
「一発やらせてください」とお願いする姿はちょっと愉快だが、羽生さんにとっては迷惑でしかないだろう。
最後まで救いの無い物語は青春を表現したかったのだろうか?
モヤモヤしか残らない一冊になってしまった。
理系あるあるの恋が見たかっただけなんですけどね。
また他の作品で喜多喜久さんを楽しみたいと思います。