「崩れる」 貫井徳郎
副題「結婚にまつわる八つの風景」
本書は結婚をテーマにしたダークな話を集めたミステリー短編集となっている。
怖い話が続くから本書のせいで僕の婚期が一年は遅れてしまった。
もし本書が大ヒットしていたら、少子化がますます進むことになるだろう!
と結婚できないことを本のせいにしてはいけないよね。
ここからはいくつか特に良かった話を中心に書きます。
「崩れる」
表題作にもなった話。
働かない夫とニートの息子がケンカをする。
暑さにうだされる妻がとった行動が恐ろしい。
妻が夫の悪口を言い過ぎたこともケンカの種にはなっていると思う。それがあんな悲惨な事件に繋がるとは。
一話目がこれだから先が思いやられる。
「追われる」
結婚相談所に勤める女性が主人公。
求める人には擬似デートを行い、デートの内容をフィードバックするサービスを行う。
この仕事の説明だけで嫌な予感がしたが、案の定擬似デートをした男性から告白されてしまう。
やんわりと断るものの男性の行動はストーカーじみていく。
ラストはミステリーにはありがちなのだが、実際にありそうなだけに怖かった。
擬似デートをしてみたい気もするが、フィードバックが嫌だな。
待ち合わせがスムーズじゃない、会話が面白くない、お店選びのセンスがない、その洋服はデート用なんですか?とか言われたら一生立ち直れない気がする。
⬆︎の言葉は本書には出てきませんよ。
僕が言われそうな言葉を想像してしまいました。
「見られる」
結婚間近の女性が毎日のようにイタズラ電話を受け、ひどい言葉を言われる。
「今日も遅刻したな」とかから始まり、「お前など結婚する資格はない」などの暴言に加え、「昨日は二回もしてたな」と部屋の中を見ているかのような電話まであった。
女性は電話の男があまりにも室内の様子を知っていることから身近な人を疑ってしまう。
結婚をする前に結婚したいのは果たして相手も同じ気持ちなのか考えないといけないのだろうか?
結婚は勢いとはいうもののその勢いに相手を巻き込まないといけないから大変そうだ。
このまま行くと結婚相談所を利用するか猫と結婚するしかなくなるので、結婚にネガティブなイメージを抱いている場合ではないですね。
お出かけして出会いを探そう!!
とは思うもののつい動物園に足を向けてしまう僕がいます。
動物園の片隅に恋が落ちていないか探しに行こう!
と文学めいたことを書いて終わりにします。
本書は1994年に書かれた話もありますが、新鮮に読むことができます。
それだけ結婚というテーマは常に身近なものなのでしょう。