「動機」 横山秀夫 ②
以前に書いた「小説のジャンル分け」でも紹介しましたが、全然足りなかったなと思ったので、改めて書きます。
今回は初の試みとして一つ一つについて書いてみようと思います。
「動機」
警察署内で警察手帳が盗まれる話。
本書が発行されたのは2000年だが、働き方改革の最中だったのだろうか、警察官は常に警察手帳の保持義務があるのだが、退勤する時は上司に預け上司に管理する方式を採用した世界。
窃盗犯は内部の人間かそれとも外部の人間か。
また何の為に盗んだのかを描く。
主人公は定年間際の刑事。定年間際は『魔の季節』か。
僕にもきっとくるのだろう。ちょっと恐ろしい。
「逆転の夏」
殺人を過去に犯した男の出所後を描く。
彼は女性をホテルに誘い(妻がいるにも関わらず)、関係を持ったが、女性は女子高生だった。
女子高生は男がベンツに乗っていたからと金を要求する為に近づき関係を持ち、強請った。
男は逆上し、殺してしまう。
小説では殺人犯を美化してしまうような事が多いが、出所後も男は殺されたのは強請ってきたからだと被害者のせいにするクズっぷりがいい。
全く同情できない犯人に久しぶりに出会えたのでちょっとテンションが上がった。
「ネタ元」
主人公は女性の新聞記者。
『臨場』でもそうだったが、新聞記者を書かせたら横山秀夫さんはピカイチだろう。
男に負けじと働くのは感動するが、それだけ女の自分を意識しているという事。
当時は特に女性というだけで働きづらい環境にあったのだろうか?
そこまでは想像できないのは社会が変わってきたからか、それとも僕のまわりにいる女性がたくましいからなのかは分からない。
「密室の人」
裁判長の居眠りが招く悲劇を描いている。
妻との関わりの中でも法服を脱がないのであれば彼の中ではどこにいても密室にいるようなものだろうが、一番近くで支えてくれている奥さんにとってもそれは密室の中だ。
横山秀夫さんは男女の話も書けるのかと更に好きになった。
あと裁判官なら誰でも一度は居眠りをするとあったのだが、それは本当だろうか?きっと僕だったら毎日居眠りをするだろうけど、驚いた。
一つ一つの話しが面白くてとても大切な一冊になりました。