「ズッコケ中年三人組 age43」 那須正幹
遂に僕が最もすごいと思ったミステリーの紹介です。
本書は年に数回しか推理しない僕を夢中にさせ、仕事中ずっとついて考えていたくらいにハマりました。
何度読んでも面白く、そういえばこの三人組は小学生の頃からたくさんの事件に巻き込まれていたなぁと昔のことも思い出しました。
ぜひ一度手に取ってみて欲しいです。と言っても本書を置いている書店はもうないかもしれませんが。
本書を一言で表すと裁判員裁判の教科書です。
ハチベエが栽培員でハカセが解説役、モーちゃんはボーっとしています。
三人について語るととても長くなるので事件について書きます。
栽培員裁判は当事者になりきって読むことができてとても楽しいです。
皆さまも推理に参加して欲しいですがネタバレしすぎもよくないので裁判の結果や真相は書きません。
扱う事件は殺人。
被告は工務店の社長で被害者は元従業員だ。
元従業員はチャラくて社長の娘をしつこく誘うわ勤務態度は良くないわでクビになっていた。
辞めてなお娘にちょっかいを出していることを知った社長はキレて元従業員を殴ってしまった、というのが大まかな概要。
以下は裁判で提示された証拠について箇条書きで。
社長は一度取調べの際に自白しているが、裁判で殺人は否認している。
凶器はスパナ。スパナは被害者宅近くのゴミ箱に捨てられていた。
推定犯行時刻前、被害者宅の前で社長の目撃情報あり。証言者はおばあちゃん。
社長は被害者宅を訪れて、被害者を拳で殴ったことを認めているが、スパナでは殴っていない。
スパナは工務店から被害者が盗んだもので社長の指紋がついている。
まだまだ情報が足りないし、表現の違いがあるかもしれませんが、骨格はこんなところです。
争点は誰がスパナ🔧で殴ったか。
普通に考えたら社長が犯人です。
これらをハチベエや他の栽培員が話し合い、ハカセは制度について解説したり、ハチベエにアドバイスしたりしています。
しつこいようですが、モーちゃんはボーっとしています(笑)
段々と事件の概要が明らかになる様子は本格ミステリのようですが、とっても丁寧に事件や制度を書いている分、三人組の活躍は少なめです。
そしてハカセの恋バナに気を取られつつもページをめくると、遂に判決が確定します。
すごいのはこの後、事件は決着したかに思えたもののハカセの中ではモヤモヤが残り、僕もつられてモヤモヤします。
僕は一度ページを閉じ、考え続け、まとまった頃に読み進めるとハカセと同じ結論に達します。(その時の嬉しさは言葉にならない。)
この時点で残り8ページ、そのまま終わってもよかったものの、ハカセは推理したことを社長にぶつけます。
ハカセはたまに無茶な行動をするので、三人組の中で一番危険な男です。
社長の返した一言は衝撃的な言葉で、、、。
まさかズッコケシリーズで大どんでん返しを起こすようなミステリーと出会えるとは思っていなかった僕は熱が出たかのようで、しばらくはハカセと一緒に呆然としていました。
ズッコケ三人組は中年になってもツチノコを追い続けるなど、とても無邪気ですが時々目の覚める様なミステリーがあるのが魅力的です。
いつかテレ東辺りでドラマ化して欲しいなあという呟きで締めます。
左がハードカバーで右が文庫。
将来の夢の一つにズッコケシリーズを全て揃えるというのがあります。