「狼と兎のゲーム」 我孫子武丸
今週のお題「おとうさん」
我孫子武丸さんは「殺戮にいたる病」やゲームの脚本を務めた「かまいたちの夜」などが有名ですね。
本格ミステリだけでなく「人形シリーズ」では保育士と腹話術師の恋も書けるし、「速水三兄弟シリーズ」はコメディ色の強いミステリーを書くなど、幅が広くて大人気の作家さんです。
しかし、僕の中では道尾秀介さんと同じくらい気持ち悪い作風の作家さんという印象を持っています。
我孫子武丸さんの作品は10作は読んでいるので、これは悪口ではなくて褒め言葉としてとってもらいたいですが。
本書はその気持ち悪い方。
友だちは心澄望(こすも、以下平仮名表記なのは許してください。)は父のパソコンを壊してしまったと怯えている。
こすもの父は警察官だがとても乱暴で虐待を受けていたのを主人公は知っていた。
以前こすもの家に遊びに行った時、こすもの母が父に強姦されている現場にいたのだった。
こすもに説得されてパソコンの様子を見に行くとこすもの弟の甲斐亜(がいあ)の死体を始末している父親の姿を目撃してしまう。
本書では父が狼で兎は主人公たち、必死に逃げるが力と頭では父親にかなわない。じわじわと追い詰められてしまう。
美人な担任の先生に助けを求めるも様子が変で、信用できるかわからない。
果たして彼らは逃げきれるのか、あと事件の真相にも謎があって、最後まで目が離せない。
のだが、読後感は最悪で吐き気がするほど気持ち悪い。
紳士ぶるつもりはないが、女性を酷い目に合わす男は許せない。
だが、感情を激しく揺さぶるという点ではトップクラスの本ではある。
お題に沿った本としてパッと思い浮かんだのが本書だったものの、父の日ということを考えたらハートフルな話について書けばよかった。
選ぶ本を間違えたという事実には1000文字以上を書いてから気がついたので後悔しないようにします。
最後に僕の父の事を少し書いて巻き返したいです。
父とはあまり本の趣味が合わないのですが、父は池波正太郎さんの「鬼平犯科帳シリーズ」を愛読しています。(恐らく実家には全巻揃っています。)
今でもすごく印象に残っているのですが、何年か前父の寝室に入ったところ、枕もとに鬼平犯科帳の5巻と13巻が置いてありました。
何で飛び飛びに読んでいるんだ?と少し気になりましたが、真相は聞いていないです。
恐らく何度も読み直しているので、お気に入りの巻なのだと思います。
それだけのエピソードなのですが、「あぁ父も本を愛してるんだなぁ」としみじみ感じました。
父が本の虫なら僕も本の虫です。