「扉は閉ざされたまま」 石持浅海
僕の好きなドラマに「古畑任三郎」があります。
最初に犯人が分かっていて、だんだんと古畑警部に追い詰められていく様子がとても面白いです。
兄弟で見終わったあとに「古畑の前で犯罪をするのだけはやめておこう」などと話していました。
ドラマではこのタイプのものをサスペンスというみたいです。
「扉は閉ざされたまま」もこのタイプなのですが、に小説だと倒叙(とうじょ)ミステリというらしいです。
本書は犯人が語り手でどのように殺害するかとその方法を実況しています。
僕は必ず読んだ小説のジャンルについて考えてしまう癖があります。たくさん読んできたなかで倒叙ミステリの作品数は少ないので本書はとても貴重です。
ストーリーはタイトルの通りと言えるだろう。
大学の同窓会で館に集まった七人。犯人はここでなら完全な密室が作れると思い、実行に移す。
後輩を事故に見せかけて殺害後、外部からは侵入できないように現場の扉を閉ざした。
犯行は成功したかに思えたが、碓氷優佳(探偵役)だけは疑問を抱き、犯人との頭脳線が始まる。
見どころは碓氷優佳が放つ冷たい言葉の刃だろう。
彼女は頭が良すぎるせいか、犯人のさりげない言動や行動から事態を把握できる。
そして、論理で固められた鋭い言葉で犯人に迫る様子にはひやひやさせられる。
読み手の論理的思考力を試すような一冊でもあるが、もちろん何も考えなくても楽しめる。
本書の弱点と言われているのが、犯行動機のあいまいさだ。
僕は碓氷優佳の思考についてはあまり考えなかったが、犯人の動機については深く考えた。
それは探偵にも同様で、碓氷優佳はなぜ謎を解くのだろうかとも考えた。
そして犯人と探偵役の動機が興味深く、簡単には理解できないものであったからこそ本書は魅力的なのだろうと思う。
僕は本書と出会って以降、動機について考える癖がついた。
最後にですが、碓氷優佳シリーズは今までで五作出ていて黒木メイサを主演にドラマ化もしています。
僕は碓氷優佳が好きになれずで、彼女を語り手にしていたらこのシリーズは読めなかっただろうと思います。
このシリーズを読んだことがある人は共感できる人もきっと多いと思います。
と、悪口言っておいてなんですが、このシリーズは最高に面白いです。僕は犯人に肩入れして犯人が勝って欲しいと思いながら読んでいます^_^
石持浅海先生は倒叙ミステリ作品の第一人者なので、古畑任三郎が好きな方におすすめです。
表紙がボロボロですみません。本がどんな姿になってしまっても手元に置いておきたいのです。