スーパーノヴァの読書日記

主に本について書いています。たまにドラマや音楽や映画についても語ります。気軽にコメントいただけたら幸いです。

「雪の鉄樹」 遠田潤子

本書(文庫版)の発売は2016年の4月だった。

それから一年後口コミがあったのかそれとも出版社の努力なのか大ヒットとなった。

僕はその時書店員で本書を必死に並べては売って補充の注文を出してという日々を過ごしていた。

本書を買う人は主にお母様がたばかりだった。レジ前の平台に山積みになった本書を見つけてワイワイガヤガヤしていたのが印象に残っている。

あと覚えているのが本書は異例のロングセラーになったということ。発売から日が経っても売れ続け、しかも数ヶ月の間平台を占拠した本はこの本だけだった。

僕の経験上そのような売れ方をする本は東野圭吾の小説など、内容が良い本だけだった。

僕も仕事中に背表紙のあらすじをチェックしてみたが(書店員の特権です)、正直あまり魅かれるものがなかった。

しかし、勉強の為だと思い買って読むと抜けられなくなってしまった。

最高に面白い訳ではないのだけれど、筆者が一文一文を大事に書いているのが伝わってくるし、辛く暗いシーンが続くがその分希望が大きいだろうなという期待があった。

 

本書の主人公は雅雪という庭師。祖父と父は地元で有名な女たらしだった。

雅雪は両親のいない遼平の面倒を13年間見続けているが、遼平の祖母からは屈辱的な扱いを受けている。それでも耐えるのはある事件の贖罪の為だった。

ある日雅雪の隠してきた過去に気づいた遼平は、雅雪を恨むようになるが………。

 

あらすじはこんなところだろうか。

構成としては現代の雅雪パートと過去の雅雪パートを行ったり来たりする。

なぜ雅雪は謝り続けるのだろうか。そして過去が分かってから、希望はあるのだろうか。

あまりにも悲しい過去があったのだが、謝り続ける雅雪に対してもムカムカしてしまう。

子どもには愛情の限りを尽くしても応えてくれないこともあるだろう。

自分の人生を生きるという選択をして責める人とは関わらないということもできるはずだ。

しかし、頑固なまでに謝り続ける雅雪の過去が気になるし、いつか報われて欲しいなとも思う。

今まで読んだ本の中でラストはみんな幸せで終わって欲しいとこんなに強く思ったのは初めてだった。

本書の凄さは450ページと分厚い小説ながら一文も無駄な描写がないところだ。

登場人物の名前にも深い意味があるし、現代パートでは三人称の文章で過去パートでは一人称の文章なのも意味を持たせている。

 

序盤の重苦しいのを耐えれば後半の面白さと読み終えた時の達成感の素晴らしさは保証します。

でも、合う合わないが小説には必ずありますが、本書は合わない人の方が多いかしれません(笑)

ただ、一度インターネットであらすじを読んでみて欲しいです。

たくさんの人が読んだということが分かると思います。

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