「試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。」 尾形真理子
春といえば出会い。出会いといえば恋ですね。
僕のタイプの女性は猫みたいな人です。興味ない方、三段落目に飛んでください(笑)
それは完全に実家で飼っていた猫の影響です。
飼っていた黒猫の名前は「くま」と言います。
くまとの生活は仲良いと思ったら突然かまれるみたいに一進一退のせめぎ合いでしたが、毎日胸をときめかせてくれました。
そんなくまみたいな女性がいないかとつい探してしまいます。
垂直跳びが2メートルだったり、語尾に「にゃあ」ってつけたり。長いヒゲが生えてるのもいいですね。
未だにそんな女性とは出会ったことがないので、自分の将来が心配です。
念のために書きますが、上のは冗談ですよ。猫みたいな女性がタイプは本当ですが、実際に語尾に「にゃあ」とつけられたら逃げます。
いや、その人との会話は面白いかも………。
本書は五編からなる恋愛の短編集。
主人公は全員女性で同じセレクトショップでのお買い物という共通点がある。
セレクトショップで試着室を使う理由は人それぞれだが、誰かのために使う女性のワンシーンを切り取る。
年下に片想いする文系女子や不倫に悩む美容マニアなどなど。
共通点を持たせることや主人公の設定はよくあるものだろう。いわゆる王道の恋愛小説だ。
僕が思う最大の魅力であり特徴なのが、タイトルの長さと結びの一文があることだ。
僕が気に入った章のタイトルが、
「可愛くなりたいって思うのは、ひとりぼっちじゃないってこと。」
だ。長い。この章の文末にも素敵な一文がある。文庫本の帯に結びの一文が書いてある。
このような仕掛けは一見するとあまりかっこよく思わない人もいると思う。
しかし、繊細で細かいところまで気配りがきいている(と感じさせる)文章が話に引き込ませて主人公に感情移入させるし、登場人物に嫌な人が少ないないことも読みやすくさせる。
筆者は博報堂でコピーライターとして働いていた経歴があり、本書がデビュー作です。
素敵な一文を先に考えてから物語を作るのか、物語を組んでからそれにあった一文を考えるのか気になるところです。
さわやかな読後感は春にぴったしです。
書店ではじわじわと売り上げを伸ばしていました。このような売れ方は中身が良い証拠です。