「リターン」 五十嵐貴久
「リカシリーズ」の追記です。
こちらでは本書で一番怖かったところを中心に紹介させていただきます。
舞台は八王子市の高尾や阿佐ヶ谷、高円寺などの中央線沿い。
主人公はコールドケース捜査班の女刑事。
冒頭、高尾で死体が見つかった事件の捜査会議が西八王子署で開かれる。
モニターに映る写真にはスーツケースに詰められていた死体。
死体には手足と顔が無かった。鼻も目も耳も舌も切り取られていた。
これだけで十分恐ろしいが、僕が震えたのはここから。
捜査一課長がマイクで話す
「しかし、両手両足は最近切断されたものではない。数年、あるいは十年ほどが経過しているようだ。
さらに死体を解剖したところ、この死体は殺害されたものではない。死因は窒息死、喉に食事を詰まらせて死んでいたのだ。つまり、殺人ではない。事故死なのだ。」
この後、前作からの流れの説明があり、
「今朝発見された死体は殺人事件の被害者ではない。あくまでも死体遺棄事件なのだ。」
ここを読んでからしばらく、唸ってしまっていた。そんなことあるのかって。
被害者には失礼なことだが、五感のほとんどを奪われて生きてると言えるのか真剣に考えてしまった。
それをしたリカが狂っているのはもちろん、被害者も何も感じないように、もしかしたら必死に狂ってしまおうとしたのだろうなと思う。
現実にはおきえない事件なのだろうが、リカならそれができると感じさせるだけの筆力が五十嵐さんにはあった。
リカシリーズを知らなかった人は「リターン」から読んでもいいです。
前作を読んでない人でも分かるように説明の必殺技である捜査会議がありますし、リカへの興味を高めてから一作目に行くのも趣きがあります。
三作目の「リバース」はリカを十分に知ってから読んだ方が怖いと思います。