「二年半待て」 新津きよみ
僕は雑食で本屋さんでオススメしているからには面白いのだろう!と思って勢いで買ってしまうことがよくある。
そして本棚の未読コーナーに貯めておくクセがあり、ようやく本書を読破したのは買ってから半年後だ。
新しく読むものを選ぶ時にその時の気分を大事にする。それゆえに明らかに女性向けの本書を手に取ることがなかったのだ。
じゃあ何故買ったんだという批判にはぐうの音も出ない。
新津先生とは初めましてで読み始める時には緊張感があったが、いざ読んでみると一気読みでロジックを大事にする作風が好きになった。
本書は七つの話からなる短編集で悩める女性たちの姿が描かれる。
どの話も良かったが、一番は「兄がストーカーになるまで」だった。
「おまえ(妹)のことは、俺が一生そばにいて、守ってやるからな」
「わたしも、一生お兄ちゃんのそばにいて、支えになってあげるからね」
と誓い合うほど仲が良い兄妹だが、妹は兄に彼女ができない事を心配している。
妹は眼科で働く子を兄に紹介するのだが、次第に想いはエスカレートして……。
この話を読み終えた時、鳥肌が立った。
あの一文もあの描写も全てがラストに繋がってたんだと唸ってしまった。
女性作家らしく、女性の内面を共感を得られるように描写するのはもちろん、それでいて論理的でどんでん返しされた時に心地いい。
表題作の「二年半待て」では自分だったら待つのか待たないのか真剣に考えてしまった。
本書は何らかのテーマを持って編んであると感じていたがあとがきでそれが明かされます。その手法もお見事でした。
未読の方はあとがきから読むのがいいと思います。あとがきにネタバレはないので安心して下さい。