「ルビンの壺が割れた」 宿野かほる
この本の発売当時、僕は書店員でした。
そこは新刊が少し安く買える最高の職場でした。
本書の宣伝用のポスターをレジの下に貼ったことをよく覚えています。
著者は覆面作家で有名な作家さんが名前を変えて出しているのではというウワサもあります。
いざ読んでみると一気読みでしかも、一時間くらいで読み終わる。
あまりに感動しすぎて、文芸好きの従業員仲間に貸して皆で感想を言い合いました。
「あれは男の方が悪い」が僕の意見。「女性もひどかった」が文芸担当だった子の意見。
意見が違うことがこんなに面白いと知ったいい経験になった。
複数の人に貸したが皆翌日に返してくれて面白かったと言っていました。
本書は終始、男と女のSNSでのやりとりだけで進む。セリフだけで進むからこそスピード感がでる。
当時は付き合っていた男女がお互いの本音が言える(書ける)ようになるくらいの時が経ち、段々と二人の関係性や当時の事実が明らかになつていく。
初めは久しぶりにSNS上で会った二人のぎこちない会話。
次第に当時はどんな心境で付き合っていたかを告白し合う。
男性には女々しいところがあり、女性は軽蔑されても仕方ない行動をとっていた。
後半になり赤裸々に語り合う二人。だんだんと不穏な空気が漂い始めるがそれには訳があり衝撃のラストにつながる。
僕は今までに様々なタイプのミステリーを読んできたので、ついつい途中からトリックを探してしまう。人違いや時間差、どこかで嘘が見つかるかもと色々考えた。
しかし、最後の一行に裏切られる。なぜかそれが本当に心地良かった。
この本は僕の中で最後の一行がすごいランキング第1位です。
↑このランキングが権威を持てるように頑張ります。
一冊手に入れて友だちに貸してあげれば、あなたの評価アップは間違いないと思われます。
そして貸したのならばすぐに返してくれて感想を言い合うことができる、そんな名著です。