「ママの狙撃銃」 荻原浩
表紙が汚くてすみません。恐らく半身浴しながら読んでいた本だと思います。
僕の生活には常に本があって、シチュエーション毎に読む本を変えるようにしています。
通勤時、帰宅時、半身浴用で3冊同時進行の時もあるのです。
そんな中で荻原浩さんの本はいつも一気読みです。他の本に浮気できなくなる、とても好きな作家の一人です。
この本は特に荻原浩さんの個性を発揮できていると感じました。
ママは元殺し屋で凄腕のスナイパーだった。
今は普通の男と結婚して二人の子を産み、平凡な家庭を守ることが仕事だ。
ママは夫の仕事での悩みやいじめ問題に翻弄されている普通の主婦でガーデニングが趣味だ。幸せな生活をしているが、ときどき元殺し屋が出てしまう。
↑元ヤンみたいな表現ではあるが。
本書の魅力はママが語り手であることだろう。
多くの小説では主人公に普通の人(本書だったら息子)を置き、やばい奴を客観視させて判断を得ようとするが、本書では終始ママが語り手だ。
夫の浮気を疑うこともあるし、子どものためだったら自らの命を投げ出すのだろう。
特にいじめの止め方は元殺し屋の特性が存分に出ていて愉快だった。そしてちょっと泣けた。
このように読み進めると普通の主婦のように思えるのは荻原浩さんの筆力の高さゆえだろう。
殺しの仕事を頼まれて悩むことは多くの人にはないだろうが自分だったらどうするか真剣に考えてしまった。
ママに感情移入しすぎて、罪悪感で胸が痛くなることがあったくらいだ。
荻原浩さんの小説は感情を揺さぶるのが上手い。
それは読者を感動させようとしているのではなく、キャラを作りそのキャラと誠実に向き合うことによって生み出した術なのだと思う。