「クローズド・ノート」 雫井脩介
大分読み込んだせいか表紙がちょっと汚くなっていますね。
本書は沢尻エリカ主演で映画化された作品です。
完成試写会で記者の質問に「別に」と答える姿が炎上していたのが記憶に新しいです。
知人の話だと、映画の題名にちなんで「沢尻エリカ、心もクローズド!」との見出しで報道されたらしいです。
個人的には機嫌が悪かっただけの人に対してそんなに叩かなくてもいいのに、と思いながら騒動を眺めていました。
主人公の堀井香恵は小学校の教員を目指し一人暮らしを始めた女子大生だ。
ある日引っ越し先の部屋から前の住人が残していったノートを発見する。
大学では吹奏楽部、放課後は文房具屋でのアルバイト、イラストレーターの石飛との出会い、忙しい日々を過ごしながらもノートの存在が気になってしまう。
ある日遂にノートを開いて読み始めると日記だったようだ。
彼女は教師だったらしく、香恵が憧れる職業だった。
書かれた内容に励まされ、またノートの持ち主について調べようとするが、、、。
内容はてんこ盛りだが大学生は勉強に恋に仕事に忙しく、それでいて一生懸命だ。
わちゃわちゃしている様子は見てて楽しかったし、一人暮らしの寂しさ、恋の切なさを読み取ることができた。
本書を二つの読み方をしてみた。
というのも恋愛小説として最高なのは間違いないもののお仕事小説としても傑作だったからだ。
一つは文房具屋でのアルバイトを中心としたお仕事小説としての読み方だ。
レジだけでなく、万年筆のメーカーの名前やペンの細さに至るまで詳細に書かれている。
香恵が「もっと声を出して」と注意される様子には頑張ってと応援したくなる。
本書を読んで近所の文房具屋に万年筆を買いに行った僕はその後万年筆を使わなくなることを知らなかった。
(言い訳すると僕は左利きで右から左に線を引くが、買った万年筆はその動きに対応していなかったのだ。)
もう一つは石飛との恋を中心とした恋愛小説としての見方だ。これはなかなか進まずもどかしいが、ノートの持ち主とも深い関係があるので複雑なのだろう。
こちらは書きすぎないところが良かった。二人はどうなるのかずっとワクワク、キュンキュン(死語?)しながら読むことができた。
どう読むか(映画を先に観るかも含め)は自由ですが、学生時代の甘酸っぱい記憶が蘇ることは間違いないと思います。
春にオススメの一冊です。